研究実績の概要 |
本研究では、ランダムノイズや空気揺らぎなどの外乱の多い実験環境においても、ロバストな全視野変位・ひずみ測定を実現するものである。今年度は3つの応用研究を行い、マイクロスケールのひずみ分布計測から大型構造物の変位測定まで応用を展開した。それぞれについて新しい計測手法を提案し、その有効性を確認した。具体的には、まず、インフラ構造物の変位測定技術として、空気揺らぎの影響を受けにくい橋の下から画像を撮影し、橋のたわみを計測できる方法を開発した(Experimental Techniques, 2022に掲載)。従来、高精度な測定が困難であった面外変位を見かけ上の面内変位から換算する方法を提案することで、10メートル離れた撮影場所でも0.05mmの精度で橋のたわみ値を測定できた。次に、マイクロスケールの材料評価のための変位・ひずみ分布測定として、2台の実態顕微鏡カメラを導入した3次元変位計測法を提案し、そのための計測システムを構築した(Optics Express, 2022に掲載)。これにより、CFRP複合材料の3点曲げ試験における3次元変位と面内ひずみ分布の計測が可能となった。最後に、レーザー光を用いたデジタルホログラフィによるシングルカメラでの多視点記録を行い、透明体の3次元位相分布を測定できる測定システムを考案・構築した(Optics and Lasers in Engineering, 2023に掲載)。非対称な温度場計測の実験を通じてその有効性を確認した(Optics Express, 2022に掲載)。本技術により、空気揺らぎなど目に見えない透明な物体の動的な動きを可視化することに成功した。
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