研究課題/領域番号 |
20H02043
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
溝尻 瑞枝 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70586594)
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研究分担者 |
山岸 里枝 (田邉里枝) 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (70432101)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光熱還元 / 過渡現象 / 多光子吸収 / 金属錯体 / Cu2Oナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,多光子励起とその無輻射失活の2段階過程を利用した新規局所熱還元により,世界で初めて非貴金属を回折限界以下の微小空間へ析出する,光-熱還元析出プロセスを創出することにある.令和3年度は,1. 各種グリオキシル酸金属錯体の非線形光吸収特性評価と,2. ポンプ・プローブ法を用いたそれら原料からの析出の超短時間現象観測を行った.具体的には,大気中で還元析出可能なグリオキシル酸金属(GACu,GACo)錯体を調製し,その線形及び非線形光吸収特性を紫外可視分光光度計,Open-aperture z-scan法を用いて評価した.その結果,GACu,GACo錯体ともに照射パルス間隔時間により吸収特性が変化した.このことは吸収特性に温度依存性があることを示唆している. また,令和2年度に構築した,グリオキシル酸金属錯体からの析出現象を明らかにするための光学系にディレイラインを導入し,ポンプ・プローブ法による析出観測を行った.GACo錯体からの析出において,繰返し周波数80 MHzの近赤外フェムト秒レーザパルスを還元析出用ポンプ光と,観測用プローブ光に分波し,プローブ光にディレイをかけることで,照射後0秒から550 psのレーザ描画中のプローブ光の透過率変化を計測した.その結果,描画速度8 mm/sでは,照射後550 ps以内に顕著な析出は生じず,析出は550 ps以降に生じる現象であることがわかった.一方,描画速度1 mm/sでは,550ps以内に還元析出・再酸化が生じている可能性が示唆された.今後,異なる描画速度で照射した際の,プローブ光透過率変化を明らかにし,還元析出過渡現象の解明を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,1. 各種グリオキシル酸金属錯体の非線形光吸収特性評価と,2. ポンプ・プローブ法を用いたグリオキシル酸金属錯体からの析出の超短時間現象観測を行った. 1. 各種グリオキシル酸金属錯体の非線形光吸収特性評価 大気中で還元析出可能なグリオキシル酸金属(GACu,GACo)錯体を調製し,その線形及び非線形光吸収特性を紫外可視分光光度計,Open-aperture z-scan法を用いて評価した.その結果,GACu,GACo錯体ともに近赤外フェムト秒レーザ波長において高い透過率を示し,その半波長以下で大きな吸収を有した.また,Open-aperture z-scan法では,GACu錯体,GACo錯体ともに照射パルス間隔時間により吸収特性が変化した.このことから,非線形吸収特性に温度依存性があるこ都が明らかになった. 2. ポンプ・プローブ法を用いたグリオキシル酸金属錯体からの析出の超短時間現象観測 グリオキシル酸金属錯体からの析出現象を明らかにするための光学系にディレイラインを導入し,ポンプ・プローブ法による析出観測を行った.GACo錯体からの析出において,繰返し周波数80 MHzの近赤外フェムト秒レーザパルスを還元析出用ポンプ光と,観測用プローブ光に分波し,プローブ光にディレイをかけることで,照射後0秒から550 psのレーザ描画中のプローブ光の透過率変化を計測した.その結果,描画速度8 mm/sでは,照射後550 ps以内に顕著な析出は生じず,析出は550 ps以降に生じる現象であることがわかった.一方,描画速度1 mm/sでは,550ps以内に還元析出・再酸化が生じている可能性が示唆された.今後,異なる描画速度で照射した際の,プローブ光透過率変化を明らかにし,還元析出過渡現象の解明を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には,目標通り,グリオキシル酸Cu,Co(GACu,GACo)錯体の線形・非線形吸収特性を明らかにするとともに,GACo錯体からの析出現象を明らかにするため,0~550 psの析出現象を透過プローブ光により観測した.その中で,高速描画条件(8 mm/s,繰返し周波数80 MHz)では,GACo錯体からの析出は550 ps以降に生じる現象であり,低描画速度条件(1 mm/s,繰返し周波数80 MHz)では,550 ps以内に生じる現象であることが明らかとなった.この結果を踏まえ,令和4年度は,異なる描画速度で照射した際の,プローブ光透過率変化を明らかにし,還元析出過渡現象の解明を目指す.それにより,パルスの連続照射による熱影響と析出現象の関係を明らかにする.
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