研究課題/領域番号 |
20H02052
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
増田 宏 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40302757)
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研究分担者 |
遊佐 泰紀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (70756395)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 点群処理 / 機械学習 / 工業設備 / 物体認識 / 形状モデリング / 劣化検出 / 3次元計測 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
工業設備の保全を目的として,対象物の特徴や計測環境に依存した処理を深層学習を用いて実現するための研究を行った.本年度は,(1) 深層学習による点群からの物体認識とセグメンテーション, (2) 自律移動ロボットによる自動計測,(3) 点群からの劣化検出手法, (4) 不完全な点群からの構造解析手法についての研究を行なった. 研究課題(1) では,深層学習の学習と評価のためのラベル付き点群データを効率的に作成するためのインタラクティブな点群処理システムの構築を行なった.また,CADモデルから多様な学習データを作成する手法についても開発を行なった.それに基づいて,点群特徴量と画像特徴量を組み合わせる手法を開発し,生産設備の点群データを用いた評価によって有効性を確認した.研究課題(2) では,点群データから自律移動ロボットによる最適計測位置の算出とロボットの移動経路を算出手法を開発した.学内の工作室の点群を用いて,手法の有効性を評価した.研究課題(3) の劣化検出については,微小なクラック検出を行うための深層学習手法を実装して評価を行い,問題点の抽出を行なった.また, VR システムによる設備壁面のクラックの目視検出システムについても実装と評価を行い,問題点を抽出した.研究課題(4) の不完全な点群からの構造解析手法の研究では,レーザスキャナによる計測データを変形後の形状として捉え、設計図面から作成した解析モデルが変形後に計測データに一致するような解析手法を開発し,手法の有効性の評価を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題 1 (深層学習による点群からの物体認識とセグメンテーション) については,開発したインタラクティブシステムを用いて生産設備のラベル付き点群の生成を行った.さらに,CADデータからの訓練データ生成とデータ拡張手法を系統的に検討し,その有効性の評価を行うことができた.また,複数の部材認識手法を実装して,評価と問題点の抽出を行うことができた.研究課題2 (自律移動ロボットによる自動計測) では,最適計測位置と移動経路の算出手法の開発と実装を行なった.また,学内の小規模の工作室で点群計測を行って,手法の評価を行なった.研究課題3 (点群からの劣化検出手法) については,複数の手法を実装して比較検討した結果,既存の画像処理や深層学習によるクラック検出では,必ずしも十分な信頼性が得られないことがわかった.今後,複数の特徴量の組み合わせやマルチスケール手法などを組み合わせた手法を検討していく予定である.また,検出した劣化の確認に VR システムを用いる手法についても実装し,十分な描画速度で可視化できることが確認できた.また,大規模データを用いた点群データでの検証実験を行なって,問題点の抽出を行なった.研究課題4(不完全な点群からの構造解析手法) については,変形後の表面の一部を直接的に与える方法(変形後表面拘束)と変形後の表面上の法線ベクトルを与える方法(法線ベクトル拘束)について,線形有限要素法と非線形有限要素法のそれぞれの下で両者の定式化を行うことができた.以上のことから,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題1については,CADデータから生成された訓練データが,実測データに比べて認識性能が高くないことが判明したので,その原因を調べるとともに,新しいデータ拡張手法についても検討していく予定である.また,生産設備に適した物体認識手法についても検討していく.研究課題2については,大規模な生産設備での最適計測と計測経路の評価と手法の見直しを行う.研究課題3では,複数の特徴量を組み合わせたマルチスケール特徴量について検討し,様々なスケールの劣化が検出できる手法を検討する.さらに,VRシステムにおいては,点群重畳によって微小なクラックが消失する問題についての解決法を検討する.研究課題4では,開発した手法を大規模設備の点群に適用し,手法の有効性を検討する.さらに,本年度は行わなかった「不完全な点群からの形状再構成手法」についても手法の開発を行う.対称性や事前知識を用いることで,欠落した点群を補う手法について検討する予定である.
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