研究課題/領域番号 |
20H02058
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチスケール流体 / 格子ボルツマン法 / ブラウン動力学 / 粘度調整剤 / グリース / 流体潤滑 / 分子シミュレーション / マルチスケールモデリング |
研究実績の概要 |
(1)ブラウン-流体連成(BDLBM)シミュレータの開発と高効率化:本研究課題が採択されたことにより,新たに BDLBM シミュレータの開発を開始した.まずは,LBM 部分に関してシミュレーションのコードを作成した.2次元のコードを作成し,次に3次元化することにより,分子計算部分との連成の準備をした.また,応用課題として,エンジンのピストン-シリンダ間のような高温度場かつ強い摺動環境下において,VII の添加による増粘 効果を予測する式の確立を目的とし,その前段階として,エンジンオイル中の VII に作用する流体力学的相互作用の 影響の大きさを検証した.その結果,粗視化粒子に作用する流れ方向の抗力はせん断速度に依 存せず,経過時間に対する推移にはほぼ差がないことや,エンジンオイルのような温度が高い基油では,主流速よる 流体力学的相互作用よりもランダム力の方が粗視化粒子 に与える影響がかなり大きいことがわかった.
(2) BDLBM シミュレータにおける官能基のモデリング:より詳細な分子シミュレーション解析によるボトムアップのモデリングのため,反応力場を用いたリン系極圧添加剤の界面吸着挙動に関する解析を実施した.真空中および基油中における添加剤の吸着挙動について,電荷移動も含めた解析を実施し,分子構造の違い,また表面の違い(酸化鉄と鉄)によって電荷移動ダイナミクスが異なることを明らかにした.
(3) 材料探索手法の開発:マテリアルズ・インフォマティクスの評価関数として,パーシステント・ホモロジーが有効であることを示した.高分子溶融体において解析を実施し,メソスケールの分子構造が従来の動径分布関数ではなくパーシステント図で良く説明できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)ブラウン-流体連成(BDLBM)シミュレータの開発と高効率化:BDLBM シミュレータの開発のため,格子ボルツマン部分に関しては特任助教を採用してコーディングを開始したが,ブラウン動力学部分に関しては,コロナ禍のため招聘予定であった特任助教が来日できなかったため,開発
(2) BDLBM シミュレータにおける官能基のモデリング:官能基モデリングの部分については,古典分子動力学を用いた極圧剤のダイナミクスの解析も開始した.これにより,油中において自己組織化した逆ミセルを形成することがわかった.これを発展した研究テーマも立ち上げた.
(3) 材料探索手法の開発:パーシステント・ホモロジーについて一定の成果が得られたが,マルチスケール流体への適用については解析手法を基礎的に検討する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
(1)ブラウン-流体連成(BDLBM)シミュレータの開発と高効率化:BDLBM シミュレータの開発のため,格子ボルツマン部分に関しては採用した特任助教の助力によって更に高速化を実施する.特に,並列化についてノード内並列を実施する.また,ブラウン動力学部分に関しては,コロナ禍のため招聘予定であった特任助教とともにソフトウェアの開発および高精度化を実施する.
(2) BDLBM シミュレータにおける官能基のモデリング:ブラウン動力学部分を作成することにより,官能基の粗視化モデリングが実施可能となる.今後は,この点について広範に展開予定である.また,よりミクロなモデルについては,分子動力学法および散逸粒子動力学を用いた逆ミセルおよびグリースのモデルとしての紐状ミセルの解析を実施する.
(3) 材料探索手法の開発:パーシステント・ホモロジーをはじめとする新規解析手法について,マルチスケール流体への適用について,その前段階として溶液中のイオンについて検討する.
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