現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A)実験における理想的な振動格子乱流場の実現:初年度に有効性が確認されたウオータージェット加工で平面性を高めて作成された乱流生成格子と内箱を使用し、PIVを用いて流れ場を計測した。その結果、内箱内の流れ場の対称性はかなり改善される事が確認されたが、二次循環流れが消滅することはなかった。そのため、発生する二次循環流れは対称性に起因する本装置固有のものである可能性が考えられた。そこで、対称性を崩す外力(コリオリ力)を与えるため回転テーブル上で流れ場全体を回転させた。実験は主に、角棒径 d = 10 mm、メッシュサイズM = 50 mm、格子振動ストローク S = 60 mm、格子振動周波数 fg = 2 Hz、作動流体水、でPIV計測を実施し、回転角速度はΩ = 0, 0.5, 1, 2, 3, 4, 5, 10 rpm とした。その結果、弱い回転でも二次循環流れが劇的に減衰することが明らかになった。 B)振動格子乱流に対する高速DNSアルゴリズムの構築と大規模DNSの実施:初年度に構築したインフルエンスマトリックス法と領域分割法を用いた振動格子乱流の高速DNSコードを使用し、計算を継続して実施した。今年度は、計算領域 4M×4M×40M に対し中解像度(格子数 200×200×1400)の差分格子を用い、Re = fg M 2/ν = 5000, S/M = 4/5, 6/5, d/M = 1/5 の計算条件のDNSを実施した。初年度に実施した無次元時間 fg t = 180 までの計算では統計的定常に達していなかったが、さらに無次元時間 fg t = 300 まで計算を継続する事で概ね統計的定常状態の流れ場を得る事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的A)~C)のうち、まず昨年度に引き続きA)~B)を実施して乱流統計量を算出し、それらの結果を用いてC)を実施する。 A)実験における理想的な振動格子乱流場の実現:これまでに、ウオータージェット加工で平面性を高めて作成された乱流生成格子と内箱を使用し、さらに弱い回転を加えると二次循環流れが劇的に減衰する事が確認された。そこで今後、まずは二次循環流れが抑制されかつ回転場に特徴的な準二次元的渦構造が現れない最低回転数を特定し、その流れ場を静止系の理想的な状態とみなせるものとして振動格子乱流の乱流構造の検討を行う。乱流構造の検討には、アンサンブル数がより確保できる水平断面PIV計測も実施し、鉛直方向に多数の断面で実験を行い、乱流統計量の鉛直方向分布を取得する。 B)振動格子乱流に対する高速DNSアルゴリズムの構築と大規模DNSの実施:本研究で構築したインフルエンスマトリックス法と領域分割法を用いた振動格子乱流の高速DNSコードを用い、計算領域 4M×4M×40M に対し中解像度(格子数 200×200×1400)および高解像度(格子数 300×300×1900)の差分格子を用い、Re = fg M 2/ν = 5000, S/M = 4/5, 5/5, 6/5, d/M = 1/5 のDNSを実施し、統計的定常状態の流れ場を得る。それらの流れ場を用い、乱流統計量や乱流渦構造の検討を行う。 C)実験およびDNSデータによる乱流拡散過程のシナリオとメカニズムの解明:上記A)で得られた実験結果および上記B)で得られたDNSの結果を用い、振動格子乱流の減衰則(乱流拡散則)を特定する。また、振動格子によって生成される後流渦とジェット渦の干渉を考察し、乱流拡散過程のシナリオとメカニズムの詳細を解明する。
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