研究実績の概要 |
本研究は、A)実験における理想的な振動格子乱流場の実現、B)振動格子乱流に対する高速DNSアルゴリズムの構築と大規模DNSの実施、C)実験およびDNSデータによる乱流拡散過程のシナリオとメカニズムの解明、を研究目的としている。 A)について、令和3年度の研究結果から静止系で発生する二次循環流れは装置固有のものであることが示唆されたが、回転系では二次循環流れが劇的に減衰することが明らかになった。そこで本年度は、回転角速度Ω=0, 0.5, 1, 2, 3 rpm の条件で鉛直断面PIV計測を実施して回転の効果を詳細に調べ,Ω=0.5 rpmの弱い回転でも静止系(Ω=0)と比べ二次流れが大幅に抑制されることを示した。さらに実験を進めた結果、静止系でも長時間のアンサンブル平均を取ると二次循環流れが抑制される事が明らかになった。これより、静止系では長周期の緩やかな速度変動が二次循環流れを生じさせるが、回転系では速度変動の周期が短くなり二次循環流れが抑制される事が示唆された。乱流統計量としては、乱れの分布に加え積分長さスケール等についても導出し、それらに対する弱い回転の効果も考察した。 B)では、初年度(令和2年度)に構築したインフルエンスマトリックス法と領域分割法を用いた振動格子乱流の高速DNSコードを使用し、令和3年度に統計的定常状態となる流れ場を得たが、本年度はそこからさらに静止系と回転系(実験でのΩ=2 rpmの流れ場に対応)の計算を実施し、統計平均量を得た。基本的な統計平均量については静止系および回転系ともに実験結果を良く再現する結果を得た。さらに実験では詳細な考察が困難な乱流統計量として乱れの収支やレイノルズ応力の不変量マップ等を導出し、それらに対する回転の効果を調べた。特に、乱れの収支のうち乱流拡散項は C)の乱流拡散過程に直接関係する乱流統計量である。
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