研究課題/領域番号 |
20H02065
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
玉野 真司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40345947)
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研究分担者 |
森西 洋平 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222351)
山田 格 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40772067)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乱流境界層 / 界面活性剤 / 抵抗低減 |
研究実績の概要 |
本研究では、粘弾性流体の特異な流動現象である「最大抵抗低減流れ(MDR流れ)」の生成・維持における「粘弾性」の役割を明らかにすることを目的とする。そのため、ニュートン流体(水)および非ニュートン流体(粘弾性流体である界面活性剤水溶液)を平板上乱流境界層流れに壁面高速注入(主流の数倍程度大きい速度で壁面に沿って注入)することで「流れの完全再層流化」(層流が十分に下流でも維持される)を図る。実験においては、溶液の高速注入が可能な注入機構を構築し、可視化観察、およびPIV計測を実施する。数値計算においては、溶液の高速注入に対応した流入境界条件および界面活性剤水溶液のレオロジー特性を忠実に再現したDNSを実行する。「溶液の壁面高速注入による完全再層流化の効果」と「粘弾性流体の持つ抵抗低減効果」の類似性に着目しつつ、実験と計算の両面から「MDR流れの生成・維持機構」を解明する。 2020年度は、実験については、まず高速注入装置を新たに設計・製作した。その際、流れ場に影響を与えない工夫を施した。また、高圧マイクロフィーダーと加圧タンクを用いた2種類の注入方法を検討した。その結果、高圧マイクロフィーダーの場合には注入流量が不足し、加圧タンクによる溶液注入が必要であることを確認した。次に、ローダミンBを用いた染料可視化観察により、壁面に平行かつスパン方向に一様に溶液注入がなされることを確認した。数値計算については、実験に対応した入口境界条件を様々に検討し、安定な数値計算を実施可能な数値計算手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した通り、高圧マイクロフィーダーおよび加圧タンク(圧力調整機能付き)を用いた溶液注入装置を新たに構築した。溶液注入装置が乱流境界層に影響を及ぼさないようにテストプレート面側の肉厚を可能な限り薄くし、流線型の設計とした。壁面注入のスリット隙間は、先行研究の知見を参考にして1 mmとした。この場合、高圧マイクロフィーダーでは注入流量が不足することが判明したため、2021年度以降は、加圧タンクによる注入実験を実施することとした。また、水の高速注入による流れの染料可視化実験を実施し、壁面に平行かつスパン方向に一様に水を注入できていることを確認した。 さらに、本実験に対応した数値計算を実現するため、溶液の壁面高速注入を模擬した入口境界条件を検討した。その結果、流入境界面の壁面近傍に一様な高速流れ条件を課す方法が最も安定かつ実験に対応した条件を再現できることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
様々な注入速度、異なる主流方向位置での可視化実験を通して、完全再層流化の可能性ならびにその条件を特定する。水の高速注入に加えて、界面活性剤水溶液の高速注入した場合の乱流境界層流れのPIV計測を実施し、乱流統計平均量および乱流構造の比較を通して抵抗低減メカニズムの解明を図る。 さらに、粘弾性流体の構成方程式モデル(FENE-Pモデル)と流動性(粘度の逆数)の方程式をカップリングした新しい構成方程式モデルを用いて、界面活性剤水溶液の壁面高速注入を模擬した大規模なDNSを実行し、特に実験では得られない「粘弾性応力の流れ方向変化」に着目することで、MDR流れの生成・維持のメカニズムを明らかにする。
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