研究課題/領域番号 |
20H02069
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
望月 信介 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70190957)
|
研究分担者 |
鈴木 博貴 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (10626873)
亀田 孝嗣 近畿大学, 工学部, 准教授 (70304491)
伊藤 萌奈美 (笹森萌奈美) 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (80836065)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 壁面せん断応力 / 抵抗低減 / 直接測定 / リブレット / 炭酸ガス排出低減 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は高精度の壁面せん断応力計測装置を開発し、リブレットによる摩擦抵抗低減を1%の精度で確認することである。フォースセンサー、平面センサーに新しい設計を導入することで、壁面せん断応力直接測定装置を開発し、風洞実験により目標とする精度への到達を目指す。 新型センサーは高剛性フォースセンサーを採用することで、流れに影響を受ける固有振動数からの解放を実現した。これにより、オイルダンパーを必要としないシステムを構築できた。また、高剛性により微小変位にすることで、測定毎の較正が不要になり、測定精度の低下をもたらす較正手順の削除が達成できた。 気流温度の変化が変位センサ―の出力に大きな誤差をもたらすことが判明した。これについてはスーパーインバー材をセンサー本体に採用することで、温度変化の影響を1/6に抑制することができ、壁面せん断応力を0.6%の精度で計測できるに至った。 普遍法則実現のため、摩擦抵抗低減が生じる場合の平均速度分布を壁近傍まで測定する必要がある。従来はピトーレークで計測しており、壁近傍の計測が困難であったが、熱線プローブを特別に製作することにより、壁近傍の速度計測を実現した。 滑面上のゼロ圧力勾配下の乱流境界層について、壁面せん断応力および平均速度分布の計測により対数速度分布の成立を確認した。航空機用リブレットを用いた風洞実験を行い、流速が60m/s付近では抵抗低減の可能性が示されたが、より高速に置いてはリブレットフィルムの付着に課題があり、安定した計測が困難で、実験準備への新しい方針が定まった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はコロナウイルス感染拡大防止による移動制限により実験開始に多大なる影響があり、半年程度の遅れが生じた。2年目の前半も同様な移動制限があり、上半期は初年度の遅れを取り戻すことができなかった。下半期は遅れを取り戻すため、山口県産業技術センター所有の風洞を用いた予備実験を加えることで十分な準備を行い、JAXAにおける初回の実験において今後の展開に必要なデータをすべて取得し、ほぼ目標としていた状況に回復している。
|
今後の研究の推進方策 |
JAXAにおける2回目および3回目の風洞実験を2022年度の9月および3月に予定している。昨年度の実験により新型壁面せん断応力計が十分な測定精度を有することが判明したが、気流温度の影響およびリブレットの設置における凹凸が問題であることが判明した。2022年度9月の風洞実験に向けて、温度変化による影響の補正、およびリブレット配置のための矩形浮動片要素実現の準備を行う。両者ともに山口県産業技術センター所有の風洞にてその有効性を確認していく予定である。摩擦面が矩形の浮動片要素は世界的にも珍しく、非滑面の流れにおいては活躍が期待される。9月までにこれらの計画を完了し、JAXAにおける風洞実験において航空機用リブレットフィルムの摩擦抵抗低減を確認したい。 摩擦抵抗低減に伴い、壁法則の確認を進めるための準備を進める。これは普遍法則構築のためである。風洞実験における気流温度変化は速度計測において影響が大きい、昨年度の実験において温度変化が1℃程度の場合には速度分布を熱線流速計により高精度に計測できることが判明した。2022年度3月のJAXAにおける風洞実験においては、熱線流速計による速度計測における気流温度変化の影響を削除する計画で、コンピュータによる高次の較正手法開発を予定している。この較正方法により、温度変化による影響を除去した速度分布データを取得し、リブレットにより摩擦抵抗低減が生じた流れにおいて対数法則への影響を確認し、普遍法則確立を目指す。
|