研究課題/領域番号 |
20H02072
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
関 眞佐子 関西大学, システム理工学部, 教授 (80150225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Segre-Silberberg効果 / 細胞分離 / 変形性 / 粘弾性 |
研究実績の概要 |
流路内層流に浮遊する粒子が慣性に起因する揚力を受けて,粒子の大きさや変形性、流速等に応じて流路断面内の特定の位置を通過する現象はSegre-Silberberg効果として知られており,粒子の分離・選別への応用が期待されている.細胞を浮遊させる場合には高分子等を含む粘弾性流体を媒質とする場合が多いことから,慣性による揚力に加えて,細胞の変形性や媒質の粘弾性に起因する揚力も重要となる。本研究は,この現象を実験および数値シミュレーションによって解析し、細胞の分離・選別への応用に向け、浮遊粒子の変形性や媒質の粘弾性がSegre-Silberberg効果に及ぼす影響とその機序を解明することを目的とする。2022年度は、変形性をもつヒドロゲル微粒子を用いた実験と矩形管内流れ中のSegre-Silberberg効果の数値シミュレーションを行った. ヒドロゲル粒子の浮遊液を正方形微小管に流し,下流断面における粒子の通過位置を計測した.ヒドロゲル粒子は媒質とのコントラストが弱いため蛍光指標したゲル粒子を用いることとし,「微小流路断面観察システム」を蛍光計測用に改良することにより管出口付近の正面観察を行った。低レイノルズ数(~0.1)で管中央への集中、レイノルズ数=5-10で対角線上の4点への集中が見られた。これらの粒子集中パターンは剛体粒子の分布と対照的であるのに対し、赤血球分布と定性的に一致したことから、浮遊粒子の変形性が寄与していることが分かった。数値シミュレーションでは、矩形管を流れるニュートン流体中の粒子運動とFENE-Pモデルに基づく弾性流体中の粒子運動の解析を行った。特に断面のアスペクト比が1.5と2の矩形管に対しニュートン流体に浮遊する剛体球の運動を、様々な粒子径とレイノルズ数の場合に解析し、粒子集中パターンのマップを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,変形性をもつヒドロゲル微粒子を用いた実験と矩形管内流れ中のSegre-Silberberg効果の数値シミュレーションを行い,ほぼ当初の計画通りに研究が進展している.ヒドロゲル粒子は媒質とのコントラストが弱いため通常照明では観察が困難であった.そのため,蛍光指標したゲル粒子を用いて蛍光観察に切り替えることにし,共焦点レーザ顕微鏡による蛍光計測を行った.蛍光観察によりゲル粒子の位置計測は可能となったが,光軸方向の解像度が数ミクロンとあまり良くないため,「微小流路断面観察システム」をレーザ照明とイメージインテンシファイア,ハイパスフィルタ設置により蛍光計測用に改良した.その結果、管出口の正面観察が可能となり,管断面の粒子位置の高精度計測が実現した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、矩形管を用いた実験と変形粒子を用いた数値解析を行い、研究のまとめを行う.
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備考 |
JPSJに発表した論文がJPS Hot Topicsとして取り上げられた(10.7566/JPSHT.2.033), 科学新聞(2022年9月2日), JSTの英語記事(//sj.jst.go.jp/news/202210/n1014-02k.html)、中国語記事(//www.keguanjp.com/kgjp_keji/kgjp_kj_smkx/pt20221019000001.html)
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