本研究は、太陽電池等で未利用な長波長な光(低エネルギーな光子群)を、利用可能なより短波長な光(より高エネルギーな光子群)に変換する光アップコンバージョン(UC)に関する。当該年度の交付申請書には以下3点の研究実施計画を記載した。 (1)ルート1の材料創製:液相からの析出法 (2)ルート2の材料創製:融液からの多結晶膜生成 (3)励起子輸送特性の計測 まず、(1)については、2021年度に本課題の成果として確立した固溶体結晶のUC材料の創製方法論を拡張し、母相となる発光分子結晶に複数の増感分子種を熱力学安定に固溶させた高性能な「可視光→可視光」のUC固体材料の創出に取り組み、成功させ、その成果を 査読付雑誌Applied Physics Expressから出版した。また、その成果の一部は国内の民間企業に還元し、共同特許出願を行った。さらに、このような固溶体UC結晶の応用先を拡張するため、無脱気の水中において高性能なUCが実証であること及び関連の特性評価を行い、成果を査読付雑誌Frontiers in Chemistryから出版した。(2)については、本課題の成果として2022年にJournal of Materials Chemistry C誌から論文出版した多結晶膜の生成装置を発展的に利用し、入射可視光を紫外域にUCする膜の創製に成功した。これは論文投稿準備中である。(3)については、ハードウェア・ソフトフェアの改善により、計測システムの信号-ノイズ比(S/N比)が改善し、固溶体UC結晶中に光生成された三重項励起子の拡散挙動がより高い信頼性をもって計測可能となった。このような時空間分解能を備えた励起子拡散計測システム自体にも新規性が存在しており、関連成果は論文発表予定である。
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