本研究は赤外域における波長選択近接場光を用いた光起電力発電を目指していることから、波長選択近接場光電池および波長選択近接場光放射体の製作に注力している。最終年度である今年度は波長選択光起電力電池の製作と発電特性の測定に注力した。分子線エピタキシャル装置を用いて、InAs基板上に、TeドープGaおよびGaそしてSbの分子線により厚み50nmのn型GaSb層を成長させさた。このときそのモビリティが最も高くなるドープ量(キャリア濃度)を最適化した。さらにその表面にGaとSbの分子線により厚み50nmのアンドープのp型GaSb層を積層した。その後、塩酸にてInAs基板を取り除き、薄膜状のp-n接合GaSbを、金(Au)蒸着されたSi基板上に、簡易真空パック機を用いて圧着する。このファンデルワールス力接合によりオーミック接合となる。さらにp型GaSb表面に、開口面積300nm×300nmのグリッド状Au電極を電子線描画と高周波超音波洗浄機によるリフトオフにより1cm×1cmサイズの波長選択電池が製作できることを示した。製作された電池は、GaSbのバンドギャップ近傍の波長1.6umに吸収ピーク(吸収率0.95)を有し、それより長い波長域では吸収率0.05となること、さらにこの選択吸収されたふく射により1平方センチあたり9mAの発電が可能であることを示した。一方、向かい合う放射体については反応性イオンエッチングによりタングステンの平滑面に断面800×800nmのピラーアレイ構造が製作できるものの、目標とする断面100nm×100nm、高さ200nmには至らなかった。
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