研究課題/領域番号 |
20H02088
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高田 保之 九州大学, 工学研究院, 教授 (70171444)
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研究分担者 |
高橋 厚史 九州大学, 工学研究院, 教授 (10243924)
津田 伸一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00466244)
Shen Biao 筑波大学, システム情報系, 助教 (80730811)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 沸騰開始点 / 濡れ性 / 表面構造 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
(1) 新規表面開発と沸騰伝熱試験 エタノールについてはハロイサイトナノチューブ(HNT)コーティングにより,沸騰開始過熱度が大幅に低減すること,および核沸騰熱伝達率が向上することが明らかになった.アルミニウム伝熱面にリン酸アルマイト処理を施し,表面に微細構造を形成させたところ,熱伝達率が3倍以上に向上することが確認された.エタノールについてはHNTとアルマイト処理の組合せが理想的な沸騰伝熱面となることが明らかになった. (2) ナノ空間での気液界面および相変化の実験的研究 AFMおよびTEMを駆使して水および気泡のナノスケールでの相変化現象の観察に着手した.今年度はその準備と測定技術の充実に注力し,観察の基盤確立に尽力した.TEMにおける試測定で気泡の成長過程を撮影することに成功した.発生した気泡は電子線により水が分解してできた水素と酸素の混合気泡と思われるが,蒸発による気泡発生との関係については今後検討していく予定である. (3) 発泡現象の分子動力学シミュレーション 発砲現象の物理機構の解明と発泡に最適な表面構造の探索を行うための分子動力学シミュレーションプログラムを開発中である.現在,計算を実施中であり,次年度以降で成果が出てくるものと見込まれる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)の沸騰実験については当初の予定よりも研究が進展している.一方で,(2)および(3)はチャレンジングな研究項目であり,準備に時間を要するものの,おおむね当初の予定通りに進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 新規表面開発と沸騰伝熱試験 エタノール等の沸騰実験を実施してその沸騰熱伝達性能について表面との関係を探求する.特に発泡開始時の様子は長作動距離の光学顕微鏡を用いて調べるが,最も重要な表面の調整については研究分担者のShenが③との双方向の情報交換をしながら開発を行う.これまでの単なる斑点による親水撥水複合面だけでなく,ナノマニピュレーターを用いてHNTを1本だけ付けた表面などサブミクロンオーダーで微細構造を変化させて発泡開始時の物理機構に迫る. (2) ナノ空間での気液界面および相変化の実験的研究 過型電子顕微鏡(TEM)を用いる。AFMでは,安定構造の把握を目的としてHNTのような特異な構造に対して三相界線がどのような挙動を示すのかを調べる.TEMによる液体観察は高速でイメージングが可能な特徴を生かして,図7に示したような微細構造とナノ気泡の関係を動的に観察する.なお,AFMやTEMで水を観察する実験だけでも最近ようやく始まったばかりの先端技術であり,アルコールに関してはその界面をナノオーダーで把握した例はほとんど無く,その実験手法の確立から始める予定である. (3) 発砲現象の分子動力学シミュレーション フッ素系高分子で修飾された低エネルギー表面における気泡核形成過程を調べるとともに,様々な表面構造との連成シミュレーションを通して最適な表面構造の予見を目指す.具体的には,下記の3つの手順(1)~(3)を踏みながら研究を進めていく.(1) Full-atom likeな詳細分子動力学(MD)シミュレーション,(2) 粗視化MDシミュレーションと表面構造連成大規模MDシミュレーション,の2項目を実施する.
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