研究課題/領域番号 |
20H02089
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 厚史 九州大学, 工学研究院, 教授 (10243924)
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研究分担者 |
李 秦宜 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60792041)
生田 竜也 九州大学, 工学研究院, 技術専門職員 (70532331)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノマイクロ熱工学 / TEM / AFM / ナノバブル / グラフェン |
研究実績の概要 |
固液界面での水の安定構造と固気液三相界線の動特性を固体面から数ナノメートルオーダーの領域において解明することを進めている。昨年度のTEM内の加熱実験からグラフェン同士で挟まれた厚さ10nm程度の水(グラフェンウォーターポケット(GWP))は高圧状態になっていることが推測されたので、このWPの圧力を直接計測することとした。手法としてはWPを半球状と仮定してAFMの探針で直接押した際の反力と変位から圧力を推定するというものである。結果としては、過去に他所で報告されたような内圧のサイズ依存性は正しくなく、最高60MPaまで様々な圧力が得られたが、最大値は底半径の大きさに依存して低下することがわかった。この結果から内圧生成の機構を考察し、最大圧力を計算するモデル式を作ることができた。このような高い圧力状態でない大気圧程度の新規液体セルをTEM観察用に開発する検討に入った。具体的には市販の孔の開いたアルミナ薄膜あるいはシリコン薄膜にMEMS技術で孔をあけてスペーサーとしてグラフェンで水を挟む構造を考えた。 水を加熱中の界面ナノバブルの観察を実現するために、自然対流を抑制できる厚さ1ミクロン程度の液膜のAFM観察を目指したが、シリコン窒化膜の残留応力が予想以上に強くて測定用デバイスを製作することは断念した。より実際的な研究として、固体表面のナノオーダーの凹凸が液滴の接触角にどのように影響するかについて実験を進め、凝縮開始直後のナノサイズの液滴にはサブナノオーダーの凹凸がピニングを有意に引き起こすことを明らかにして沸騰凝縮に関する国際会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンリキッドセルの内部圧力を定量的に計測することに成功し、今後の方向性が確立されたから。
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今後の研究の推進方策 |
固液界面ナノバブルの安定性及び挙動に関しては、これまでの溶存空気由来の空気気泡以外に水の電気分解由来の水素気泡について、HOPG上での形状および内圧の計測をAFMを用いて行う。これによって、界面ナノバブルの安定性のメカニズムの解明が進むと考えている。応用技術として相変化伝熱デバイスを想定し、加熱によるナノバブルの変化をTEMで観察する。そのためには、グラフェン同士で直接液体を挟むのではなく、適当なスペーサーを用いたグラフェンセルを開発する。それを加熱機構のあるTEMホルダーにセットして室温から1000度Cまで変化させて気液界面を観察することに挑戦する。
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