研究課題/領域番号 |
20H02096
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
水野 毅 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (20134645)
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研究分担者 |
高崎 正也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10333486)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / 磁気軸受 / 交流磁気浮上 / 自己平衡性 / 浮上回転モータ / ベアリングレスモータ |
研究実績の概要 |
(1)実験装置の設計・製作 ラジアル形磁気浮上モータの設計・製作を行った.製作した磁気浮上モータの基本的な構造は,スイッチリラクタンスモータと類似の構造とした.固定子の相数を4,コイル数を8,回転子の突極数(歯数)を6とした.より具体的には,固定子は,パイプ状の形状として,その内側にステータ電磁石を45°置きに配置した.電磁石のコアとしては,ケイ素鋼板E-15を厚さ15mmに積層したものを用いた.電磁石のコイルは,線径0.35mmの銅線を200回巻いて製作した.一方,回転子の方には,ケイ素鋼板を積層して製作した突極を60°置きに配置した.また,回転子のアキシャル方向の自由度は,ピボット軸受を用いて,機械的に拘束する構造とした.さらに,スイッチリラクタンスモータでは固定子電磁石の励磁相を一定時間ごとに切り替える駆動回路が必要となるので,アナログスイッチをマイコンで制御する駆動回路を製作した. (2)基本特性の測定とモデル化 各回転位置において,回路のインピーダンス,相互インダクタンス,磁石間に作用する力及びトルクなど諸特性を測定した.これらの結果に基づいて,浮上体の並進及び回転に関する運動方程式を含む数学モデルを導出した. (3)回転の実現 励磁相を切り替えることによって,回転に必要なトルクが発生することを確認した.通常のスイッチリラクタンスモータでは,励磁電流は直流(一定値)であるが,本装置では,励磁電流そのものが交流となる.そして,一部接触を伴いながらではあるが,回転を実現することに成功した. (4)浮上実験 各コイルに交流電圧を印加することによって自己平衡性を利用した磁気浮上を実現することを試みた.印加電圧の振幅と周波数及び回路のインピーダンスで調整したが,各自由度に対して回転子側が差動構造となっていないこともあり,安定な浮上を実現できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の前半は,新型コロナウィルス感染症のため,大学への入構が制限されていたので,装置の設計・製作及び実験の遂行がやや遅れることとなった.ラジアル形磁気浮上モータの設計・製作を行い,回転の実現に成功したが,磁気浮上の実現には至らなかった.しかしながら,回転子側も各自由度に対して差動構造となるようにすれば,安定な磁気浮上が達成できるとの知見が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
(1)本年度の研究で得られた知見に基づいて,新たなラジアル形磁気浮上モータの設計・製作を行う. (2)アキシャル形浮上回転モータの設計・製作を行う.磁気浮上モータの有力な応用例が遠心血流ポンプである.現在使用されているポンプは,ロータの支持にモノピボット軸受を用いているが,溶血や血栓の発生という問題がある.これに対し,軸受を交流磁気浮上機構に置換ることが提案されている.この装置で必要となるのはアキシャル形磁気浮上モータであるが,ロータのターゲットを積層することが構造上難しい.本研究では,ターゲットの材料として圧粉磁心を用いることでこの問題を解決する.圧粉磁心とは,個々の金属軟磁性体を絶縁被覆し,圧粉成形したもので,どの方向にも渦電流が流れにくく発熱が小さいので,交流磁気浮上用の鉄心材料に適している.ここでは,遠心血流ポンプへの応用を想定したアキシャル形磁気浮上回転モータの設計・製作を行う. (3)交流磁気浮上モータを利用した遠心血流ポンプを開発する.これまでの研究成果に基づいて,アキシャル形交流磁気浮上モータを利用した遠心血流ポンプを開発する.
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