研究課題/領域番号 |
20H02098
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
土方 亘 東京工業大学, 工学院, 准教授 (30618947)
|
研究分担者 |
藤原 立樹 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (00632291)
大内 克洋 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附研究部門准教授 (20322084)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 補助人工心臓 / 血栓予防 / 血栓検知 / 磁力・推力ハイブリッド浮上機構 / 磁気浮上 / 磁気軸受 |
研究実績の概要 |
人工心臓は心臓病患者の血液循環に使われるが,ポンプ内血栓による死亡や脳梗塞が多い.また,小型人工心臓が実現しておらず,小児は腹部に穴を開けて人工血管を外に引出し,人工心臓を体外に設置して生活している.すなわち,現在の人工心臓は延命デバイスに過ぎない状態である.そこで本研究では,羽根車の血液中ダイナミクスを解明し,ソフト(制御)とハード(構造)に応用して下記(A)(B)を実現することで「小児から高齢者まで,全ての患者の生活の質と生存率を格段に向上させる次世代人工心臓の創出」に挑戦する. (A)羽根車の加振制御による,薬剤不要の革新的な血栓予防・血栓予兆検知・血栓治療 (B)小児用まで小型化しても血球損傷の小さい,羽根車の磁力・推力ハイブリッド浮上機構 (A)では今年度は血栓の予兆検知の技術開発に取り組んだ.具体的には,従来,磁気浮上インペラを単純往復加振することによって血栓検知していたが,粘度変化との区別が困難であった課題を克服するために,インペラを円軌道加振する手法を開発した.具体的には円軌道加振時の電磁石の電流ベクトルとインペラの変位ベクトル間の相対角を円軌道の回転角ごとに記録する.血液粘度上昇時にはこの相対角が一様に上昇するのに対し,血栓形成時は,血栓発生個所のみ大きく変化する.この原理をもとにin vitro実験で基本的な検証も実施している.次年度はより高精度に血液粘度変化と血栓を区別するための相対角情報の処理方法を検討する予定である.
(B)では設計した推力・磁力ハイブリッド浮上機構を試作した.インペラの回転と変位に伴う推力をロードセルで測定した結果,CFD解析とよく一致することを確認した.さらに,インペラ径方向運動は軸受で支持した状態で,軸方向が自在に変位可能な状態として浮上実験を行った結果,インペラ回転数7000rpmから10000rpmにて浮上可能なことを実証した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた血栓予兆検知として,血液粘度変化と区別してごく初期段階での血栓検知技術を開発することができた.また,推力磁力ハイブリッド浮上機構では,実験装置を用いて軸方向の浮上が可能なことを実証できている. 以上より,当初予定していた通りに研究計画が進行しており,2022年度も当初計画通りこれまでの結果を発展させた内容に取り組む予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
磁気浮上インペラの円軌道加振による血栓のごく初期段階の検出技術を,より確実なものとするために,電磁石電流ベクトルと浮上インペラの変位ベクトルの相対角の信号りょり方法を開発し,in vitro実験で評価する予定である. また,血栓予兆検知段階でインペラ予防加振を行うことで血栓を形成させない,いわゆる血栓治療技術の実現可能性についても評価する予定である. さらに,推力磁力ハイブリッド浮上機構では,応答曲面法等を用いた機構の最適化を行うことで浮上剛性を向上し,回転以外の5自由度での浮上を目指した設計を推進する予定である.
|