研究課題/領域番号 |
20H02105
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥山 武志 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40451538)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腱 / 押し込み試験 / 指 / 指先力 |
研究実績の概要 |
本年度は,指に対する押し込み試験装置を完成させ,実際に押し込み実験を行い,力学モデルにおいて必要な被験者の指部の弾性特性を取得できることを確認した.また,同じ装置で指先力印加時の弾性特性も取得することが可能であることが確認できた.さらに,センサの装着時の指の断層画像の取得については,当初予定していた超音波断層画像を用いた方法では鮮明な画像が取得できなかったが,その代替手法としてMRI断層画像を用いる方法を考案し,センサ装着状態,指先力を加えた状態での鮮明な指の断層画像を取得でき,腱を確認することができた. また,力学モデルについては,2リンクマニピュレータの運動学を参考に第1関節,第2関節のトルクをそれぞれ深指屈筋腱と浅指屈筋腱の腱張力の関数として定式化し,指先にかかる力と腱張力の関係式を導出した.深指屈筋腱と浅指屈筋腱それぞれの腱張力の合力がセンサで計測される腱張力であると仮定し,その割合を関節角度の関数として定式化した.これらにより,指先力と指輪型センサ出力の関係式を導出できた.この導出した関係式の有効性を確認する検証実験を行い,伸展状態と屈曲状態のどちらの場合でも指先力を推定できることが確認できた. さらに,深指屈筋と浅指屈筋の腱張力の合力しか計測できない当初の設計に対して,指輪型センサの装着位置を変えた複数のセンサを組み合わせることで,深指屈筋の腱張力のみを計測できる方法を考案し,姿勢ごとに指先力推定に支配的な屈筋が異なることを計測データの機械学習により明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたセンサ装着による動作および感覚への影響の評価については準備段階であり,現在まで実施できておらず,次年度に実施することとなる.一方で,力学モデルについては,検証実験も実施でき,構築した力学モデルの妥当性が確認された.また,力学モデルに必要な特性パラメータを取得するための指の断層画像については,超音波断層画像よりも鮮明にMRIを用いることで取得できるようになった.さらに,力学モデルの構築過程で課題となった2つの屈筋の腱張力の分離について,新たな計測手法を考案し,その機能を確認することができた. 以上のように,来年度以降の研究進展に重要な知見を得ることができたことから,概ね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の他に2名の研究協力者(大学院生)が参画する予定であり,①様々な姿勢での指先力の推定,②動作計測への応用,③動作や感覚への生理的・心理的影響の解明の3つ課題に取り組み,最終的に指輪型指先力センサによる推定手法の確立を行うが,そのための実験装置および実験方法については,前年度までの成果として得られており,研究室の学生を中心とした被験者の確保もでき,効率的に実験を実施できる準備が整っている.また,力学モデルに必要な特性パラメータの同定に必要なMRIは学内の共用機器であり,すでにその利用方法を研究代表者と研究協力者が習得しており,今後も利用できる環境が整っている.以上のように研究環境および実験プロトコルの準備は整い,円滑に研究を推進できる. さらに,昨年度は限定的であった国際会議での成果発表と本研究課題に関連する生体計測および動作解析,ウェアラブルセンサに関する研究動向の収集を行い,実験データの解析方法や結果の考察を深めることで,効果的に成果を纏める方策である.
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