研究課題/領域番号 |
20H02107
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中田 敏是 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80793190)
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研究分担者 |
大川 一也 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50344966)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドローン / 停空飛行 / 深層強化学習 / センサ統合 / 生物飛行 |
研究実績の概要 |
初年度は、計画の通り5つのテーマを推進し、自然風を乗りこなすドローンの各要素の構築を目指した。 1)実験・性能評価環境の構築 送風機を用いた吸込み型の傾斜風洞を新たに作製した。本風洞は10 m/s程度までの風速を出すことができ、後述の機体が飛行するための条件を満たしている。これに振動板などを統合することで様々な変動風を生成することで、統合実験モデルによる学習を行うことが可能となる。 2)流体解析モデルの構築 後述の機体の流体解析モデルを新たに構築した。本モデルは機体の翼・胴体・尾羽に加わる流体力を精度よく高速に算出でき、動力学モデルと連成することによって、実機を用いずに仮想空間で、膨大な量の性能評価・学習を行うことが可能となる。 3)形状可変機体の構築 迎角変化と羽ばたき運動が可能な翼と、向き・広がりを変化できる尾羽を持つ機体を構築した。それぞれの角度変化はサーボモータによって精度良く実現できる。 4)風況センシングシステムの構築 様々な風速センサの中から、翼の表面に銀ナノインクを用いて歪みセンサをプリントしたフィルムを複数貼り付け、機体近傍での風速の情報を取得することとした。このフィルムは、センサとしての役割の他に、気流の変動に応じて変形することで流体力の変動を抑える緩衝材のような役割も持つと期待される。 5)強化学習に基づく制御器の構築 本研究では、多センサ情報に基づいて機体の翼・尾羽の運動を決定する制御器に、深層強化学習を用いる。本研究では、連続的な入出力に対応した学習手法を用いることとし、Open AI Gymを用いてテストを行った結果、本手法の有効性を確認できた。学習に用いる各種パラメータは、2の流体モデルを用いて調整を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響によって、実験や環境作製を行うことが困難な時期があったが、流体解析モデルの構築や強化学習手法の検討などを並行して行うことで、緊急事態宣言下でも効率よく研究を推進でき、計画していた全てのテーマで予定していた進捗が得られたため、おおむね計画通りの進捗状況であると判断した。初期段階で機体の設計を行ったところ、サイズ・流速が大きいため、これまで用いてきた流体シミュレータを直接利用することが困難であることがわかったが、シミュレータに新たに構築した乱流モデルを導入することでその問題は解決した。しかし、このシミュレータの精度検証を行えていないため、新たに構築した傾斜風洞などを用いて、その精度検証を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験環境、仮想環境、ロボットの各要素の構築はほぼ完了しており、今後は当初の予定通り、これらを仮想環境・実環境において統合することで、目的の達成を目指す。 仮想環境での学習では、流体解析モデルに機体の動力学モデルを統合することで、傾斜風洞での実験に先立ち、変動風中での停空飛行を行うための制御器を構築する。現在、仮想環境で用いる流体モデルの精度が現在は不明であり、仮想環境での学習から実験環境での学習にスムーズに移行するためにも、この精度については注意深く評価を行なっていく予定である。また、機体の動作を確認する過程で、サーボモータの反応の遅延が問題となる可能性が出てきており、場合によってはサーボモータ内の制御器を用いずに実験環境での学習を進める必要がある。 また、機体・センシングシステムを統合した実験モデルを用いて、傾斜風洞を用いた実環境での飛行実験を行う。仮想環境において学習した制御器の再学習を実験環境において行い、新たに開発したロボットの停空飛行性能を検証する。本研究では、一定の揚力(6軸力覚センサで測定)を発生し、抗力をキャンセルしながら、機体サイズの5-10%程度に重心の振動を抑制することを目標とする。風況センシングの検証を容易にするため、第一段階として、モーションキャプチャシステムを用いて、精度良く姿勢変動を評価し、これによって性能を実証した後、ジャイロセンサなどの機体上のセンサで姿勢変動を検知することとする。
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