本研究では、空気力調整のための形態変化機構を持つ固定・羽ばたき翼型の飛行ロボットに、新たに開発した風況検知システム・強化学習に基づく制御器を統合することで、目的の達成を目指す。本年度は、空気力学的モデルの改善を行うと共に、特に、機体の尾翼による姿勢制御と風速センシングに着目し、その性能評価を行うと共に、これらの要素を統合したロボットを構築した。 1)空気力学的モデル 自由飛行を行う鳥ロボットの翼・胴体の空気力学的モデルを、スパース同定手法を用いて改良し、誤差を24%から19%まで改善した。この結果、空気力の評価精度が向上するため、仮想環境から実環境への学習の移行をより円滑に行うことが可能となる。 2)尾翼による姿勢制御 3軸方向の角度と面積を調整可能な尾翼機構を構築し、その空気力学的性能を風洞実験によって調べた。その結果、尾翼の姿勢制御によって、効率を維持・向上させながら、3軸方向のモーメントを制御できることが明らかになった。この尾翼機構は、モーメントの組合せを複数の姿勢で実現できるという点で冗長であり、様々な外乱に瞬時に対応しながら、安定性と機動性の両立を実現できる可能性がある。 3)風速センシング 鳥規範型風速センサを、ロール方向にのみに運動を拘束した鳥規範ロボットに搭載し、意図的に片方の翼を失速させることで、風速センシングが機体の姿勢制御に及ぼす影響を評価した。この風速センサは、安定して飛行している際にはほとんど反応せず、失速によって機体の姿勢が崩れ始める直前に、強く反応する。この風速センサの反応は、圧力センサや加速度センサと同様な反応であるが、ノイズが少なく失速に敏感に反応する点で、他のセンサと比較して優位であると考えられる。したがって、このセンサの信号が得られた際に適切に制御手法を変更することで、失速による大きな姿勢変化を抑制できる可能性があることがわかった。
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