研究課題/領域番号 |
20H02109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永谷 圭司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (80314649)
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研究分担者 |
濱崎 峻資 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (10849003)
谷島 諒丞 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (10869598)
石上 玄也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90581455)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自動掘削 / 油圧ショベル / 土砂のマクロ的性質 |
研究実績の概要 |
令和三年度に進めた研究は,以下の三つに分類される.一つ目が,掘削時の土砂形状の三次元計測手法についての検討である.この計測は,センシングデバイスの性能にも大きく依存するため,複数のLiDARを試用し土砂形状取得を進めてきたが,未だ,高精度の土砂形状の測定が達成できていないため,引き続き研究開発を進める必要がある.二つ目が,推定した土砂情報を考慮した油圧ショベルの動作計画手法の提案である.この研究については,事前に適切な掘削動作を生成することで,自動掘削が可能であることが分かった.この成果は,日本ロボット学会学術講演会ならびに,計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会で発表を行い,現在,ジャーナル論文の執筆を進めている.今後は,掘削効率のみならず,掘削時の土砂のこぼれを考慮した動作計画についても研究開発を進める.三つ目が,機械学習を用いて土壌の表面画像から土壌内部の水分量の時系列変化を予測する2段階のフレームワークの構築である.第1段階として,RGB-IRカメラを用いた土壌表面画像を入力,水分量計による土壌表面の水分量を出力としたCNN改変モデルを構築した.同成果は,Journal of Robotics and Mechatronicsという雑誌に投稿し,採択された.また第2段階として,第1段階で推定された土壌表面水分量から土壌内部の水分量をLSTMによって推定するモデルを構築し,特に外部の気温も同時に計測し時系列入力データを与えることによって,土壌内部水分量の時系列予測に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和三年度は,土量変化率の精度を向上させるため,掘削時の土砂形状の三次元計測手法について検討を行った.この計測は,センシングデバイスの性能にも大きく依存するため,複数のLiDARを試用し土砂形状取得を進めてきたが,現状では,高精度の土砂形状の測定が達成できていない.また,土砂が硬い場合に,掘削後の土砂がブロック状になってしまうため,土量変化率の精度が低下してしまう問題についても,解決策の検討を進めた.これらと並行して進めた「土砂情報を考慮した油圧ショベルの動作計画」については,掘削対象となる土質の推定結果を利用し,事前に,動力学シミュレータを用いて異なる土の状態における効率的な掘削軌道を取得しておくことで,土の状態に応じてエネルギー効率の高い掘削軌道生成を行うことが可能となった.この手法は,動力学シミュレーション実験ならびに,油圧ショベルの実機を用いたフィールド試験により,手法の有用性を確認することができた.また,土壌表面画像から土壌内部の水分量推定・予測のフレームワークを用いて,土壌内部の水分量予測の二乗平均平方根誤差として,四種類の異なる土壌においても1%未満を達成し,最小誤差としては0.09%を達成することができた.また水分量の異なる砂を対象とした排土実験も実施しており,令和三年度の成果と排土実験を組み合わせる算段がついている.
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今後の研究の推進方策 |
令和四年度は,令和三年度に引き続き,三つの分野で研究開発を進め,油圧ショベルの自動掘削動作の実現を目指す.まず,引き続き土砂情報の推定の高精度化を進める.これまで確立した土量変化率を用いた手法について,センサの取り付け位置等を検討するとともに,その他のセンサ情報を組み合わせることも検討する.推定した土砂情報を考慮した動作計画の研究については,掘削効率のみならず,掘削時の土砂のこぼれを考慮した動作計画についても研究開発を進める.この動作計画は,シミュレーションならびに実機を用いた検証により,有用性の検証を進める予定である.なお,実機については,土木研究所が所有する油圧ショベルならびに,実験フィールドとして土木研テストフィールドを利用する.さらに,排土実験に対応する個別要素法(DEM)を用いた数値シミュレーションを実施し,DEMにおける支配パラメータを導出するとともに,土砂性質のマクロ指標として土砂の含有水分量との関連性を見出す予定である.
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