本年度は、前年度に実施したヒトとロボットの協調運動学習実験において高い効果を示すことが示唆されたSkillレベル調節エージェントを検証すべく、新たに実験条件を追加して被験者実験を実施した。右利きの成人男性32名を被験者としてリクルートし、8名ずつ4群に分け、それぞれ異なる戦略をプログラムされたロボットエージェントとの協調運動学習実験を行った。4種類のロボットエージェントは、それぞれ、高速に最適な運動支援を行うExpertエージェント、低速かつ時にランダムな運動支援を行うNoviceエージェント、学習者の運動成績の向上に併せて戦略を段階的にNoviceからExpertに変更するSkillレベル調節エージェント、被験者の成績向上とは無関係なスケジュールでレベルを上げていくSkill-upエージェントとした。 実験の結果、Skill-upエージェントよりも、Skillレベル調節エージェントと組んだ被験者は、評価フェーズにおいて有意に良い運動成績を示すことが明らかとなった。この結果は、被験者の運動技能レベルの向上にあわせてエージェントの運動支援を調節する戦略が、協調運動学習の効果を高めることを示唆している。本研究で想定するリハビリテーションロボットの最適な支援戦略の設計指針として、学習者の運動技能レベルを適宜定量的に評価しつつ、その変化にあわせて支援の質・量を変更することの重要性が改めて確認された。
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