研究課題/領域番号 |
20H02123
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岩崎 渉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20712508)
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研究分担者 |
森田 伸友 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (90807554)
中島 雄太 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70574341)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 温度応答性樹脂 / プラズマグラフト重合 / 紙分析チップ / 流動制御 |
研究実績の概要 |
本年度は紙分析チップ用バルブ素材となる温度応答性樹脂(NIPAAm: N-イソプロピルアクリルアミド)を均一に多孔質膜内に導入する方法として、プラズマグラフト重合による導入手法の改善を行った。これまでは重合時間を変化させることで重合量の制御を試みていたが、十分量の重合を達成するには20時間程度の重合時間が必要であり、生産性が悪かった。本年度は重合条件の見直しを行い、NAIPAAm溶液の濃度を制御することにより、重合時間5時間で常温では流れを止め、32度以上に加熱するとバルブを開く温度応答性バルブを再現性良く作製することに成功した。さらに、このバルブは複数回開閉しても、バルブ性能に変化が無く、可逆的に使用できることを確認した。これまでに報告されている紙分析チップ用のバルブでは機械的に切り離して使うものを除いて可逆的に使用できるバルブは報告されておらず、このバルブにより複数試薬を用いた複雑な分析を紙分析チップで自動化することが可能になると期待できる。一方で光応答性の付与に関しては、温度応答性樹脂の中に感光体である金ナノ粒子を効率よく導入し、弱い光でもバルブを動作させることは出来なかった。これに関しては温度応答性の付与方法を再検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度応答性樹脂を用いた紙分析チップへのバルブ導入において、より再現性のある温度応答性樹脂の導入条件を発見でき、その可逆的な動作についても実証できた。紙分析チップ用のバルブでは機械的に切り離して使うものを除いて可逆的に使用できるバルブは報告されておらず、独自性が高く、有用なバルブを確立することができたため、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度に確立した技術によりイムノアッセイを実施し、バルブを導入した紙分析チップの有効性を実証する。そのために、バルブを集積化した紙分析チップとその制御システムを構築する。さらに、バルブに光応答性を付与し、光照射によるバルブの駆動を実現する。これまではバルブ内に粒径の異なる金ナノ粒子を導入し、波長応答性を持たせることを検討してきたが、バルブ自体に波長応答性を導入するのではなく、バルブを導入した流路、もしくはその治具等の光吸収率を高めることにより光応答性の付与を試みる。
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