研究課題/領域番号 |
20H02128
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
清田 恭平 東京工業大学, 工学院, 准教授 (10796519)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リラクタンスモータ / 高効率化 / 特性切替 / スイッチトリラクタンスモータ / シンクロナスリラクタンスモータ / フラックススイッチングモータ / 巻線界磁型モータ |
研究実績の概要 |
本研究では,リラクタンス応用モータにおいて,モータの機械的構造を変えることなく,様々なモータ特性を変幻自在に実現できるモータ種別切り替えモータを提案とその基礎技術を確立する。本研究では主要な課題が3点ある。すなわち,(a)モータ種別変更時にどこまでモータ特性が変化するのか,(b)モータ種別を変更する回路の簡易化,(c)モータ種別を切り替える前提での最適な鉄心形状の探索,である。本年度は,(a)を中心にすべての課題について網羅的に研究を進めた。 (a)について,固定子に巻線界磁を有するモータについて,シンクロナスリラクタンスモータモードにて動作可能な構造を検討し,同モードによる効率及び出力の変化を確認した。固定子12極,回転子 8極とすることにより,シンクロナスリラクタンスモータとして動作可能となり,特に低出力領域において鉄損低減により効率が改善することが明らかになった。 (a)については,制御方法の改善も行った。現状ではシンクロナスリラクタンスモータモード時はオープン結線状態となる。特に集中巻かつ固定子・回転子共に突極構造である為,高調波成分による零相電流が発生し効率が低下するため,零相電流を抑制可能な制御法を検討した。一方で,高調波電流を重畳することによりこの高調波成分を出力トルクの向上に寄与可能であることも明らかにした。 (b)について,モータ巻線をスター結線に変更すると共に各相間の接続箇所にスイッチを挿入した。これにより,当初検討回路からスイッチが一組増加することになるが,巻線一相あたりのスイッチング素子数を2個に半減させつつ,効率などを犠牲にすることなく両方の動作モードを実現可能あることを明らかにした。 (c)について,回転子の突極部構造を非対称とし,回転の進行方向箇所のみにオフセット構造を設けることにより,鉄損を低減し効率が改善されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実機による検証作業については計画より進捗が遅延している。これは,①実機試験に使用予定だったインバータ4台のうち2台に問題が発生したが折からの半導体不足の影響により修理に時間がかかった,②提案制御法では行列を用いた計算が必要だが元々使用していた制御装置にて使用するためには大幅なプログラム改修が必要となったため,以上2点が原因である。ただし,①は次年度はじめに解決予定,②は年度末までに解決済みであり,次年度の研究実施に大きな影響は与えない。 また実験による検証が進まないことを見越して,当初予定では重視していなかった,巻線界磁型モータにおける提案手法の検証を行った。結果,極数選定が必要ではあるが巻線界磁型モータにおいても提案手法が有効であることが解析にて明らかになった。また,制御面においても高調波成分の有効利用法等の検証が進められたため,本モータの高効率化に関しては当初予定より進捗した。 総合的に見て,実機試験遅延による全体的な研究進捗状況に大きな影響は発生せず,研究は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため,実験装置の改修が完了し次第,主に課題(c)の検討結果である試作機を使用した実機試験を中心に研究を進める予定である。シンクロナスリラクタンスモータでの動作時の効率を向上させるための回転子形状を有する試作機と従来構造の試作機の2種類の試作機を用いて,両モータ種別にて駆動させた時の出力および効率を測定する。実機試験結果とこれまでの解析との比較を行い,もし齟齬が発生していた場合はその原因を検討する。 この際,今年度検討を行っていた,本モータのすべての動作モードにおいてベクトル制御を適用した実機試験を行う。特に今年度の研究成果である零相電流抑制法等のベクトル制御手法を中心に,提案制御手法の検証を行う。検証結果を用いて,ベクトル制御下においてモータ動作モードを円滑に切り替えるための手法について検討し,実機検証を行う。 その後,課題(b)で検討していた回路に変更した実機試験を行う。この回路は,モータ巻線をスター結線に変更することにより,巻線一相あたりのスイッチング素子数を2個に半減させつつ,スイッチトリラクタンスモータとシンクロナスリラクタンスモータの両方の動作モードを可能とした回路である。スイッチトリラクタンスモータにおいてはモータ結線にオープン結線以外の結線方法を採用した例は限られているため,スター結線を使用してもスイッチトリラクタンスモータモードにおいて効率や動作範囲に制限が発生しない制御方法を検討しつつ,実機による検証を行う。 なお,これらの研究成果を国民に開示するために,電気学会,IEEEなどにおける発表を並行して行う予定である。
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