研究課題/領域番号 |
20H02130
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横水 康伸 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50230652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 直流遮断 / パワー半導体素子 / 限流 |
研究実績の概要 |
低電圧需要家内の給配電システムにおいて,DC伝送化の動きが進んでいる。本研究は,ワイドギャップ系(SiC系)パワー半導体のスイッチング機能を電流遮断に適応させ,限流機能を具備したパワー半導体型モデルDC遮断器の回路構成・仕様を提案すること,次いで遮断過程での電流・PN接合部温度の過渡推移などを明らかにすることを主目的としている。 同遮断器の回路として,遮断ユニットと遮断責務を軽減する限流ユニットとによって構成することとし,限流ユニットでは,SiC-MOSFET(以下FET-C)と限流抵抗Rとを並列接続し,遮断ユニットでは,別のSiC-MOSFET(以下FET-I)のみで構成した。DCの限流遮断法として,(i) DCの瞬時値が過電流検出値Iを超えた直後に,FET-Cのゲート・ソース間電圧(以下,G-S間電圧)を短い時定数で急速に低下させ,限流ユニットの抵抗値をRに推移させ,DCを限流させる。(ii) FET-IのG-S間電圧を別の時定数で低下させ,遮断ユニットを高抵抗に時間推移させ,DCを0 Aに減少させ,遮断を達成する。 モデル遮断器に定格電流134 A,定格電圧1200 VのMOSFET素子を用いた。380 Vの直流電源からピーク値200から2000 Aの突入電流の遮断をモデル遮断器に課した。過電流検出値Iを60 Aに設定した場合には,R=8および10 オームの仕様によって,FET-Cの電圧限界とFET-Iの熱的温度限界を超えることなく,2000 Aの大電流を遮断できる。Iを100Aに設定した場合には,R=7 オーム以下では,FET-IのPN接合部温度が熱限界を超え,抵抗R=8 オーム以上では,FET-Cが電圧限界を超えてしまう。したがって,前述したMOS-FET素子でDC遮断器を構成する場合には,仕様として,R=8および10 オームとし,検出値Iを60 Aに設定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大定格電流134 A,定格電圧1200 VのSiC-MOSFET素子を,モデルDC遮断器に適応する場合について,MOS-FETの熱限界と電圧限界を考慮して,限流抵抗値および過電流検出値を明らかにできた。よって,半導体の定格電流・電圧とモデルDC遮断器の仕様を提示することができたといえる。次段階として,最大定格電流がさらに大電流である別のSiC-MOSFET素子への検討も開始した。その素子の過渡熱インピーダンスに基づいて,接合部からケースまでの伝熱・蓄熱・放熱を考慮した等価熱回路構成を導いた。この構成には,伝送回路の考えを適用し,最終的にはCauer型回路で表し,回路定数を決定している。同素子を用いたモデル低電圧DC遮断器による限流遮断過程とその期間での接合部温度の過渡推移を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの成果から,定格電流134 AのMOSFET素子を用いた場合には,過電流検出値Iは60A程度であり,遮断器に通常時に流れる電流は60A以下に制限されると言える。そこで,上述した大電流定格を具備したSiC-MOSFETからなるモデル遮断器に対して,直流電源から数種のピーク値の突入電流の遮断を課し,限流遮断過程とその期間での接合部温度の過渡推移を明らかにする。この際,2~10オームの限流抵抗について,限流ユニットにおける過渡的過電圧および遮断ユニットにおける熱的温度上昇を示し,遮断器仕様を提示する。次いで,半導体の定格電流・電圧とモデルDC遮断器の仕様との関係の解明を目指す。また,パワー半導体型モデルDC遮断器として,別の回路構成を検討する。
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