研究課題/領域番号 |
20H02131
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹野 裕正 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90216929)
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研究分担者 |
古川 武留 神戸大学, 工学研究科, 助教 (70845122)
中本 聡 神戸大学, 工学研究科, 助手 (10198260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核融合 / 新エネルギー / 直接発電 / 進行波型直接エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,11月に新たに古川を研究分担者として加え,前年度からの人的資源の不足を補うことができた.当初組織の市村とは専門領域は必ずしも同じではないが,竹野の役割を調整することにより,課題全体としての効率的な推進を図った.前年度に引き続き,内容は3つの副課題に分けて行った. 1) 副課題1:可変径大口径イオン源の製作では,前年度の概略設計に基づいて精密設計を行い,主要部品のターボ分子ポンプと空芯磁場コイルとを中心として,多数の小部品を設計・製作依頼した.しかし,社会情勢・国際情勢の影響を受け,空芯磁場コイルの部材調達には想定外の時間を要した.また,小部品の製作では,やはり社会情勢・国際情勢の影響で原材料価格が高騰したため当初想定予算が圧迫され,部品調達計画の見直しが必要となった.これらによって,年度内に製作予定であった大口径イオン源は完成できず,次年度へ持ち越すこととなった. 2) 副課題2:径方向散乱に注目した変調効果時間変化の模擬実験解析においては,ガス圧と高周波電力の調整により,ビーム電流の飛躍的な増大を達成した.これにより,径方向散乱の測定の見通しが得られた.一方,荷電交換による中性粒子の発生が測定に影響していることが確認された.これについては,問題を回避する条件を探る必要がある. 3) 副課題4:模擬実験結果の数値解析においては,拡張の元とする既存コードを現状実験に合わせて実行していたところ,磁場印加下で疑問のあるイオン軌道を見いだした.現時点で原因が確認できていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度後半から古川を分担者として新たに加えることができたが,前半は,当初計画の3人に対して2人での計画推進を余儀なくされたので,人的資源が不足したことは遅延の要因である.また,各々の教育職務たる授業の体制も基本的には令和2年度と変わらず非常事態体制で,昨年度以来でいくらか対応には慣れたものの,エフォートを割かれる要因であった. 今年度,最も深刻であったのは,主たる課題である大口径イオン源の製作に関して,社会情勢・国際情勢の影響を受け,大半の設備要素たる特注部品の部品材料調達に多大な時間を要したことである.例えば主たる設備である空芯磁場コイルの納入は,当初想定より4ヶ月遅れとなった.また,特注部品一般について,これも社会情勢・国際情勢の影響による材料価格の上昇によって,調達費用が従来に比べて著しく増大した.当初想定予算が圧迫され,大学既設の設備からの部品取り外しで対応するなど,費用増大の結果として想定外の時間が必要となったことも遅延に影響している.
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今後の研究の推進方策 |
計画は遅延しているが,計画の3年目となることを勘案し,令和4年度は計画調書記載の4つの副課題を並行して進める. 1) 副課題1:可変径大口径イオン源の製作では,当初令和3年度内に完成予定であったものを完成して(担当:中本,竹野)動作測定を行い(担当:古川,竹野),副課題3の自励発振実験の装置として構築を進める. 2) 副課題2:径方向散乱に注目した変調効果時間変化の模擬実験解析では,令和3年度に得られたビーム電流の飛躍的な増大を足がかかりとして,径方向散乱の測定を行う.また,荷電交換による中性粒子の発生への対応として,ガス量やイオンエネルギーを変化条件とする回避策を探る.これらに沿って,変調効果時間変化の模擬実験を進める(担当:竹野,中本). 3) 副課題3:疑似自励発振の実現と生起条件の解析では,信号帰還用の高周波増幅器は製作依頼するが,特別仕様のため,前年度同様,製作会社の部品調達予定に大きな懸念がある.現状で予想できる納期に基づいて,この機器を含めた帰還回路の設計・製作を進める(担当:竹野,古川). 4) 副課題4:模擬実験結果の数値解析では,既存の進行波型直接エネルギー変換器粒子軌道計算コードにおいて,前年度に見いだされた疑問のある磁場中のイオン軌道を解析して対策を行い,粒子の散乱過程を扱える拡張のコーディングやデバッグを継続する(担当:竹野,宮澤,後藤).
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備考 |
(解説記事)竹野裕正, "小特集 先進燃料核融合研究の現状と展開 6. 直接エネルギー変換の模擬実験研究の現状と展望," プラズマ・核融合学会誌 Vol. 98, No. 2 (2022) 91-95.
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