研究課題
計画の最終年度として,模擬実験装置の下流端に径方向分割電極系を設置し,条件変化に対するイオンビーム電流の径方向分布を測定した.イオン分離電界形成用電極系は,通常,正の直流電圧が印加され,この場合電極系は静電レンズとして作用する.静電レンズ作用による軌道変化を確認した上で,電極に高周波電圧を印加することにより変調器を模擬して,ビームの径方向分布の変化を調べた.実験はエネルギー1~2keVのヘリウムイオンビームを対象とした.電極が接地電位の場合,ビームは自身の電界によると考えられる発散軌道となる.電極への0~400Vの直流印加によって,理論通りの静電レンズ作用が観測された.定性的には,印加電圧の増大に応じて,ビーム電流は中心部で増大し,周辺部で減少する.増大・減少の分岐点の径方向位置は,ビームエネルギーと印加電圧で変化する.代わって,周波数3~9MHz,電圧振幅0~300Vの高周波を印加した.直流に比べて増大・減少の量は小さくなり,また増大・減少の分岐点の径方向位置などが複雑に変化する.直流の様に,一つの分岐点の内外で増大・減少するのではなく,測定範囲内にいくつも分岐点が生じる場合がある.また,高周波の周波数による変化も観測される.定性的には,周波数が低い方が増大・減少の量は大きいが,その程度はビームのエネルギーに依存する.高周波の印加は変調器の簡易的な模擬ではあるが,変調電極-測定電極間に集群点が存在する条件となっており,観測される複雑な変化は,変調散乱の効果が含まれていると考えられる.今後,粒子軌道計算を併用して測定結果を分析することにより,変調散乱の効果が見積もれると期待される.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plasma and Fusion Research
巻: 18 ページ: 2405053~2405053
10.1585/pfr.18.2405053