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2022 年度 実績報告書

革新的超伝導機器の実現の鍵となる長尺高温超伝導線材の電流輸送特性の統一的モデル化

研究課題

研究課題/領域番号 20H02132
研究機関九州大学

研究代表者

東川 甲平  九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40599651)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード高温超伝導線材 / 電流輸送特性
研究実績の概要

高温超伝導線材の開発進展により、超伝導機器の飛躍的な高磁界化や冷却負荷低減の可能性が生まれ、従来の低温超伝導線材が支えてきた超伝導機器応用に大きなブレークスルーがもたらされようとしている。一方、高温超伝導線材における電流輸送特性は、低温超伝導線材とは大きく異なり、上記の恩恵を受けて広がった応用範囲を網羅できるような統一的な理解とモデル化が難しく、特に定量的な機器設計に重大な課題を抱えている。また、機器の製作に必要な数百メートル以上の長尺線材には顕著な空間不均一性が存在し、これが原因とみられる焼損が相次いでおり、その評価とモデル化も急務となっている。そこで本研究では、申請者らのグループで実績のある高温超伝導線材の電流輸送特性の評価技術と定量記述モデルをマルチスケールに拡張することにより、高温超伝導機器応用の重大なボトルネックとなっている長尺高温超伝導線材の統一的モデル化に挑戦する。

特に本年度は、通常の計測手法である四端子法では電圧の観点から計測が困難であり、また磁化法によっても計測時間の観点から困難であったほどの低電界領域の特性を頼りに、そのモデル化に成功した。また同様に通常の計測手法では発熱の観点から計測が困難となる高電界領域の電流輸送特性を計測するために構築したシステムにより、直流通電時のみならず高周波交流通電時のデータの取得にまで成功した。さらに、申請者らが先導する長尺線材の空間均一性の評価に関して、これまでの液体窒素温度での評価にとどまらず、液体ヘリウム温度における評価に初めて成功した。また、これらの知見を、応用例として、エネルギー貯蔵機能を有する超伝導ケーブルの設計や運用計画に反映した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は以下の項目に分けて行っており、それぞれ計画通りの成果が得られていることから、順調に進展している。

A.低電界領域の材料の電流輸送特性の取得とモデル化:本項目に関しては、通常の計測手法である四端子法では、電界感度の問題から計測ができない。一方、磁気顕微法によれば、試料内に空間不均一性が存在しても、材料の本質的な電流輸送特性を低電界領域まで評価できる。昨年度までに、磁気顕微法を用いて、様々な温度・磁界条件下において、材料の本質的な低電界領域の電流輸送特性を取得している。本年度は、取得に成功した電流輸送特性のモデル化を行った。
B.高電界領域の材料の電流輸送特性の取得とモデル化:超伝導線材は、通電電流の増加に対して電圧が指数関数的に発生するため、通常の電流源を用いた計測手法では、突如の発熱により線材が焼損してしまう可能性がある。すなわち、本項目に関しては、通常の四端子法では発熱の問題から計測が困難である。昨年度までに、超伝導線材が発生する電圧に応じてリアルタイムに電源電流を制御するハードウェア閉ループ試験法の構築している。本年度は同試験によるデータの取得の取得を行い、そのモデル化の検討を開始した。
C.長尺線材の空間均一性の評価:長尺線材の空間均一性の評価:本項目に関しては、申請者らは世界を先導する評価システムを唯一開発できており、百メートル以上の線材の臨界電流の空間均一性をmm以下の空間分解能で、しかも5テスラまでの磁界印加環境下で計測可能となっている。また、冷媒の変更により温度も可変となる見込みとなっている。昨年度までに、このうちの最も複雑な特性となる磁界印加角度依存性について、データの取得に世界で初めて成功している。本年度は、従来の液体窒素温度による測定にとどまらず、液体ヘリウム温度における測定を行えるようにシステムを増強し、データの取得に初めて成功した。

今後の研究の推進方策

本研究は以下の項目に分けて行っており、それぞれこれまでに得られた成果を踏まえて以下を計画する。

A.低電界領域の材料の電流輸送特性の取得とモデル化:本項目に関しては、通常の計測手法である四端子法では、電界感度の問題から計測ができない。一方、磁気顕微法によれば、試料内に空間不均一性が存在しても、材料の本質的な電流輸送特性を低電界領域まで評価できる。これまでに、磁気顕微法を用いて、様々な温度・磁界条件下に対して低電界領域の電流輸送特性を取得することに成功し、そのモデル化を行った。今後は、この短尺試料に対して機能したモデルを、長尺線材に適用可能なモデルに拡張する。
B.高電界領域の材料の電流輸送特性の取得とモデル化:超伝導線材は、通電電流の増加に対して電圧が指数関数的に発生するため、通常の電流源を用いた計測手法では、突如の発熱により線材が焼損してしまう可能性がある。すなわち、本項目に関しては、通常の四端子法では発熱の問題から計測が困難である。これまでに、リアルタイムデジタルシミュレータを用いた高周波の印可によって高電界領域までの電流輸送特性の取得に成功した。今後は、当該データのモデル化に取り組む。
C.長尺線材の空間均一性の評価:本項目に関しては、申請者らは世界を先導する評価システムを唯一開発できており、百メートル以上の線材の臨界電流の空間均一性をmm以下の空間分解能で、しかも5テスラまでの磁界印加環境下で計測可能となっている。また、冷媒の変更により温度も可変となる見込みとなっている。これまでに、このうちの最も複雑な特性となる磁界印加角度依存性について、データの取得に世界で初めて成功した。また、これまでの液体窒素温度の評価にとどまらず、液体ヘリウム温度でのデータの取得にも初めて成功した。今後は、さらに温度や磁界の条件を変えることで、モデル化に必要となるデータの積み増しを行う。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Scaling Behavior of Induced Electric Field in Cuprate Superconducting Tapes During Magnetization Relaxation2022

    • 著者名/発表者名
      Zeyu Wu, Kohei Higashikawa, Kazutaka Imamura, Takanobu Kiss
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Applied Superconductivity

      巻: 32 ページ: 9000505

    • DOI

      10.1109/TASC.2022.3146818

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Measurement of In-Field E-J Characteristics in Multi-Filamentary Bi-2223 Tapes at Ultra-Low Electric-Field Down to Around 10-13 V/m2022

    • 著者名/発表者名
      Zeyu Wu, Takanobu Kiss, Shan Tian, Sohki Kishikawa, Kohei Higashikawa, Yoshinori Yanagisawa, Jun-Ichi Shimoyama
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Applied Superconductivity

      巻: 32 ページ: 6400305

    • DOI

      10.1109/TASC.2022.3160972

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 再生可能エネルギーの大量利用に向けたエネルギー貯蔵機能付き超伝導ケーブルとそれを用いた電力システムの提案2022

    • 著者名/発表者名
      東川 甲平, 木須 隆暢
    • 雑誌名

      低温工学

      巻: 57 ページ: 343-348

    • DOI

      10.2221/jcsj.57.343

    • 査読あり
  • [学会発表] リール式磁気顕微鏡を用いたダイナミック磁化測定による長尺REBCOテープ線材の局所電界―電流密度特性の連続測定に関する検討2023

    • 著者名/発表者名
      呉 澤宇,田中 佑斗,東川 甲平,木須 隆暢
    • 学会等名
      2023年第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 再生可能エネルギーの大量利用の鍵となるエネルギー貯蔵機能を有する超伝導ケーブルの可能性(3)2022

    • 著者名/発表者名
      東川 甲平, 佐藤 暢星, 井手 暁仁, 辺 文浩, 木須 隆暢
    • 学会等名
      2022年度春季低温工学・超電導学会研究発表会
  • [学会発表] REBCO高温超伝導テープ線材の4.2 K高磁界中の連続Ic測定2022

    • 著者名/発表者名
      呉 澤宇, 田中 佑斗, 東川 甲平, 木須 隆暢
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 高温超伝導線材とその電力システム応用に関するシミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      東川 甲平, 木須 隆暢
    • 学会等名
      低温工学・超電導学会 令和4年度東北・北海道支部/第2回材料研究会 合同研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of superconducting cable with energy storage function and evaluation of its functionality in DC microgrid with renewable energy sources2022

    • 著者名/発表者名
      Kohei Higashikawa, Yosei Sato, Akihito Ide, Wenhao Bian, Takanobu Kiss
    • 学会等名
      2022 The Applied Superconductivity Conference (ASC2022)
    • 国際学会
  • [学会発表] Continuous Measurement on Electric-field versus Current-density Characteristics in the Electric-field Window from 10-2 down to 10-11 V/m2022

    • 著者名/発表者名
      Zeyu Wu, Kohei Higashikawa, Takanobu Kiss
    • 学会等名
      2022 The Applied Superconductivity Conference (ASC2022)
    • 国際学会
  • [学会発表] Continuous measurement of critical current of rare earth-based high-temperature superconducting tape under cryogenic and in-field operation conditions2022

    • 著者名/発表者名
      Yuto Tanaka, Zeyu Wu, Kohei Higashikawa, Takanobu Kiss
    • 学会等名
      The 7th Asian Applied Physics Conference (Asian-APC)
    • 国際学会
  • [学会発表] ホール素子磁気顕微法に基づいた広い電界領域10-5 ~ 10-11 V/mに亘る電界電流特性計測2022

    • 著者名/発表者名
      呉 澤宇, 岸川 創紀, 東川 甲平, 木須 隆暢
    • 学会等名
      2022年度秋季低温工学・超電導学会研究発表会
  • [学会発表] 再生可能エネルギーの大量利用の鍵となるエネルギー貯蔵機能を有する超伝導ケーブルの可能性(4)2022

    • 著者名/発表者名
      東川 甲平, 井手 暁仁, 辺 文浩, 木須 隆暢
    • 学会等名
      2022年度秋季低温工学・超電導学会研究発表会
  • [学会発表] 再生可能エネルギーの主力電源化の鍵となるエネルギー貯蔵機能付き超伝導ケーブルの開発2022

    • 著者名/発表者名
      東川 甲平
    • 学会等名
      応用物理学会超伝導分科会第66回研究会
    • 招待講演
  • [産業財産権] 超電導ケーブル及び電力輸送システム2022

    • 発明者名
      東川甲平
    • 権利者名
      九州大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2022/027364
    • 外国

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公開日: 2023-12-25  

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