研究課題/領域番号 |
20H02141
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
千葉 明人 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (30435789)
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研究分担者 |
坂本 高秀 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (70392727)
呂 国偉 会津大学, コンピュータ理工学部, 上級准教授 (30599709)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | RFフォトニクス / 光2トーン信号 / RF信号 / 周波数下方変換 / マイクロ波・ミリ波フォトニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、光波に対する変調や検出を利用してミリ波帯高周波(RF)信号を計測する手法となる「光波アシストRF計測」を提案する。光波に対する高速変調を具現化する「進行波型電極構造」の特長を研究代表者が独自に開発した「光2トーン信号源」の特長と融合させ、ミリ波帯デバイスの高周波特性による限界から脱却した高確度の信号計測が可能となることを、実験・モデル解析の両面から実証することを目指す。今年度は主に光2トーン信号生成の最適条件についてモデル解析を詳細に進めた。その結果、光2トーン信号生成条件を満たすη(:2種の誘導位相量の比)やΔθ(:誘導位相量)の組み合わせは様々存在する一方で、入力RFパワーに対する最適条件(効率の極大値)の存在などが見出された。実験的検討結果との整合性も示す事ができ、それらをまとめた原著論文は国際的なオープンアクセスジャーナルに採択されるとともに"Feature paper"として編集部に選ばれ公表された。加えて、RF信号位相推定における動作のリアルタイム化に取り組んだ。この点に関連して、前年度にモデル解析や実験的検討を進めそれらの知見を当該分野に於いて著名な論文誌に公表しているが、実験により直接得られる結果からRF信号の位相を推定する処理は、いわゆるオフライン処理に留まっていた。そのため推定結果を得る際には、計算機の処理時間などによる遅延を伴うことになり、実時間動作が懸案として残されていた。そこで、RF信号の位相差の余弦に応じて得られる低周波(:数kHz)信号の振幅をDC電圧に変換する機構を電子回路で実装し、所望の動作がリアルタイムで得られることを確認した。またこの機構を提案手法の実験系に組み込み、被測定RF信号の位相差に応じたアナログ出力電圧を取得することにも成功した。これらの結果の概要は、特定非営利活動法人が定期的に発行する技術情報誌で紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請における提案のひとつは「光2トーン信号の利活用」であり、信号生成における最適条件は課題の遂行において有用な知見と考えられる。その検討結果を定量的にまとめた原著論文は本年度公表することができた上、雑誌の編集部から"Feature Paper"としてピックアップされるに至った。当該論文により実験結果の妥当性がモデル解析からも示され、この点も意義深いと考えられる。 また「光波の変調と検出を媒介とするRF信号評価手法」のリアルタイム化も、実用上不可欠となるマイルストーンでありその達成は特筆に値するものと考える。前述のRF信号評価手法は、リアルタイム動作も含めて上述の技術情報誌で紹介することができた。 これらの過程を踏まえると、申請当時の趣旨に沿って「計画通りで」かつ「短期間で」課題を遂行できたといえる。但し光2トーン信号生成については、本申請の段階で基礎的知見を得ていたためその点を考慮して「おおむね順調に進展している」という評価が最も妥当であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずRF信号評価の手法の洗練について引き続き検討を継続する。基準RF信号周波数の低減や基準RF信号源フリー・測定誤差の低減などを念頭に置いた提案手法のアップデートを模索し、実利用により適する信号評価手法の実現を目指す。また被測定RF信号周波数帯の拡張に向けて、光波に対する高周波変調デバイスそのものに加え基準RF信号周波数の低減についても検討を継続し、ミリ波帯RF信号用関連部品等の準備も進める。更に光サイドバンドの増幅についても数値解析に立脚した検討を継続し、その結果を踏まえた媒質(高非線形光ファイバ)の選定や実験的検討に繋げていく。
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