研究課題/領域番号 |
20H02142
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関屋 大雄 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20334203)
|
研究分担者 |
魏 秀欽 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80632009)
小泉 裕孝 東京理科大学, 工学部電気工学科, 教授 (50334470)
末次 正 福岡大学, 工学部, 教授 (60279255)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 無線給電システム / 高周波インバータ / 負荷非依存特性 / 電力発振器 / フィードバックネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、13.56 MHzで送電する無線給電システムにおける負荷変動、位置ずれに対し、制御システムなしに一定出力と高効率を達成する「制御レス高周波無線給電システム」の研究開発に取り組む。無線給電システムの高周波化に対し、制御システムの複雑化が性能向上のボトルネックとなっている。本研究では「そもそも無線給電システムに制御機構は必要か?」を問うことにより、この問題に対する抜本的発想の転換を図ることを目的とする。 ここで、負荷が変動しても一定電圧を出力し、かつZVSを達成する動作モードを負荷非依存動作モードと呼ぶ。令和2年度では、この動作モードをE級インバータで実現するための条件を解析的に明らかにし、準備研究で得た負荷非依存モードの知見を発展、応用することで、負荷非依存無線給電システムを開発し、実機実験でその妥当性を実証した。具体的には並列共振型負荷非依存E級インバータの回路構成を提案し、その回路構成において負荷非依存の存在証明を解析的に行った。さらに、回路実験により、理論との一致を確認し、負荷非依存E級インバータ回路群のあらたな形態として技術確立に成功した。 さらに、負荷非依存E級インバータに自己フィードバックネットワークを付加して自律振動を可能とする負荷非依存E級発振器を提案した。提案した発振器は負荷変動に対して制御なしに電圧を一定とする負荷非依存特性を維持するとともに、共振自己インダクタンスの変化に対してロバスト性を持つ。共振型発振器では動作周波数が共振周波数によって決まるので、動作周波数の自動追従が可能となる。このとき、フィードバック信号の位相が出力信号に対して周波数によらず常に一定になるフィードバック構造とすることで、発振器は一定出力とZVSを補償する最適動作周波数を追従するようになることを示した。実験による動作確認より理論の妥当性を確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では13.56 MHzの高周波無線給電システムの設計開発を行うことを目的としている。この中で、1.負荷変動、2.結合係数の変動、3.自己インダクタンスの変動がそれぞれ独立に生じた場合において、出力一定かつZVSを達成する無線給電システムを開発する。そして、それらの設計論を統合することにより、4.三つの変動が複合的に生じても対応できる制御レス高周波無線給電システムを実現することを目的としている。 制御レス高周波無線給電システムの実現に向け、2年間かけて行う予定であった1,負荷変動への対応、3.自己インダクタンスへの対応について、令和2年度での1年間で、その動作原理を理論的に押さえ、実験による確証まで終えることができた。また、2の課題に対してもその基礎となる提案を理論的予測とともに終えており、当初の計画以上の速度で進展できている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は1.負荷非依存無線給電システムの設計理論の確立、2.位置ずれへの対策の構築について集中的に取り組む。 負荷非依存無線給電システムの設計については、前年度に確立した負荷非依存インバータをコア技術とし、そこに受電回路を設計することにより、負荷に依存しないワイヤレス給電システムを開発する。その際、フィルタの構成、負荷非依存インバータのタイプによって、さまざまな特性を持つ無線給電システムを実現できることが予想される。この関係性を理論的に押さえ、負荷非依存無線給電システムの設計論として構築を進める。 位置ずれの影響は、トランスの結合係数kの変動としてモデル化される。この変動によりインバータから見た受電器のインピーダンスが変化し、出力が変化する。本研究では、この問題の解決のために受電器側の共振キャパシタに注目する。C2の役割は、L2と送電周波数に対して完全共振をとることによって、送電器から見た受電器の抵抗成分を最大化し、かつ、リアクタンス成分を零にすることにあった。我々は、C2を共振点から少しずらすことによって、あえてリアクタンス成分を発生させ、整流器の抵抗成分の変動による電圧変化とリアクタンス成分の変動によるそれをキャンセルアウトさせることで、一定電圧を実現することを提案する。さらに、インバータの共振回路のQ値の最適化により、ZVSも達成する結合非依存モードを実現する。なお、kの変動範囲はアプリケーション依存であり、本フェーズでは具体的実験による動作確認をするとともに、結合非依存達成のための一般論を確立する。
|