研究課題/領域番号 |
20H02144
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
渡辺 峻 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70546910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認証 / 同定符号 / ビットセキュリティ |
研究実績の概要 |
通常の通信路符号化では,メッセージを誤りなく伝送するために適切に符号化することで,伝送時間の線形オーダーのメッセージビットを伝送することができる.一方,同定符号とは,メッセージを誤りなく伝送するのではなく,あるメッセージが送られたのかどうか同定することだけを要求することで,通常の通信用の符号のように伝送時間の線形オーダーのメッセージではなく,伝送時間の指数オーダーのメッセージを同定することを可能にする通信形態である.この問題は新しい通信形態として1989年にAhlswedeとDueckによって導入された.そして,1990年代に活発に研究されていたものの,いくつかの未解決問題が残された状況であった.昨年度の研究で、この未解決問題を解決する方法を見出すことができた。本年度は、この成果をまとめ、当該分野のトップ学術雑誌であるIEEE Transactions on Information Theoryに投稿中だったものを、採択することができた。
もう一つ本年度に得られた結果としては、暗号システムの定量的な評価方法であるビットセキュリティの新しいフレームワークの提案がある。ビットセキュリティはある暗号システムを破るために必要なコストを定量的に表す指標であるが、判定型の問題において適用可能なビットセキュリティのよい定義がなかった。先行研究において導入されていたビットセキュリティの定義は操作的な意味付が不明であったが、我々の研究では操作的な意味付が明確な新しいビットセキュリティの定義を導入することに成功した。本成果は暗号のトップ国際会議であるASIACRYPTに採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画と変更はあるものの、十分な成果をあげている。研究成果でも述べたように、本年度は昨年度投稿中であった学術雑誌論文を掲載することができた。また、新しい成果を暗号のトップ国際会議に採択された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き同定符号の性能解析を行うための新しい手法を模索する。また、分散仮説検定の問題に注力する。分散仮説検定の問題では、観測信号を量子化して、ランダムビン符号化と呼ばれる符号化法を用いた検定法が知られていたが、この検定法が最適であるのか長い間未解決であった。本研究ではこの検定法の準最適性を明らかにし、より優れた性能を有する検定法の提案を行う予定である。
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