研究課題/領域番号 |
20H02154
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
門内 靖明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90726770)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / ビームステアリング / 導波路 / アンテナ / ルネベルクレンズ |
研究実績の概要 |
初年度にはまず、導体平板間中のTE1モードのテラヘルツ波を均一な波面に変換するための2次元ルネベルクレンズを導体平板間に形成した。ルネベルクレンズは、円周上の点波源から発せられた波動を中心対称な方向の無限遠点に無収差結像させるレンズである。TE1モードに対する実効屈折率は平板間距離に依存して0から1までの値をとるため、下側の平板表面に凹面を形成して平板間距離を連続的に変化させることでレンズを実装した。次に、広帯域化に向けた数値的検討を行った。中心周波数を変えながら設計された複数の凹面の平均をとる方法、および評価関数に基づいて最適な凹面を設計する方法を試みたが、いずれも指向性の低下を免れなかったため、本研究では単一の中心周波数の近傍で動作させる方針とした。また、下側の板をわずかに傾斜させることで、梃子を効かせるようにしてビーム角を大きく変えられることを実験的に確認した。その際、レンズ部分は傾斜させずに平板部分のみを可動構造とすることで、理論計算と近い走査角が得られることが分かった。さらに、上側の平板を導体メッシュ層で置き換えるための実装方法を検討し、銅がスパッタリングされたポリマーフィルムをレーザー加工でパターニングした構造を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルネベルクレンズは理想的には無収差であるものの、TE1モードの実効屈折率は周波数に依存するため、ある中心周波数に対して形成された凹面に対するレンズの動作帯域幅は有限となる。そこで、広帯域化に向けた数値的検討として、中心周波数を変えながら設計された複数の凹面の平均をとる方法、および評価関数に基づいて最適な凹面を設計する方法を試みたが、いずれも指向性の低下を免れなかったため、本研究では単一の中心周波数の近傍で動作させる方針とした。その実験実証も完了し、初年度の目標を達成できているため、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2次元空間中で形成・走査されたテラヘルツ波面を、漏れ波ビームとして外部空間に放射させる。そのためにまず、上側平板を導体メッシュ層で置き換えて波動の漏れが生じるようにする。そして、周波数を掃引することでビームを垂直方向に走査できることを示す。次に、平板間の相対的な傾斜を制御することで実効屈折率分布の空間勾配によりビームを水平方向に走査できることを示す。これらを組み合わせることで、ビームを2自由度走査可能なことを示す。その実証のために、漏れ波ビームの放射パターンを電波暗室内で実測するための実験系を構築する。具体的には、作製されたデバイスを回転ステージ上に設置して送受信点間の位置合わせを行うことで、2点間の複素透過係数を測定できるようにする。形成されるビーム指向性、およびその走査可能な角度範囲を実験的に明らかにし、理論計算と比較する。
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