研究課題/領域番号 |
20H02158
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 洋介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20283343)
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研究分担者 |
塩田 達俊 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10376858)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光ファイバセンサ / 曲げセンサ / FBGセンサ / マルチコアファイバ / 二光子吸収応答 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、複数の光路を一本にまとめた光ファイバであるマルチコア光ファイバを用い、曲げの大きさと向きの多点計測が可能なセンサを実現することである。一本の光ファイバで多点の曲げ計測ができるようになれば、大型構造物の診断、ロボットアームの曲げセンシング、医療用カテーテルの曲げ監視等、様々な分野に応用できる。光ファイバは電磁雑音の影響を受けないため、このセンサは様々な環境下で使用できる。また、軽量、細径で柔軟なことから、設置対象への影響が無視できる。 2020年度の研究では、原理確認のためマルチコア光ファイバの長手方向3ヶ所にFBG加工を施したセンシングファイバを用意し、提案手法による多点曲げ計測に成功した。この原理確認実験では、FBG加工を施したマルチコア光ファイバを様々な曲率で曲げ、実際に与えた曲げと計測された曲げについて、大きさと向きの比較検討を行い、計測が正しく行われていることを確認した。曲げ計測のための光学システムには、研究代表者らが開発した独自手法である「受光素子の二光子吸収応答系による多点光ファイバ回折格子(FBG)センサ」を発展させて用いた。この手法は、異なるコア、異なる長手方向に加工されたFBGをその位置によって区別する。したがって、特性が同じFBGを利用できるため、センシングファイバの作製コストを抑えられるという利点がある。更に、光路の機械的な切り替えも不要となっており、系がシンプルになるという利点も備える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、マルチコア光ファイバの隣り合うコアや長さ方向に同じ特性の光ファイバ回折格子(FBG)を加工したマルチコア光ファイバを用い曲げ計測を行う基礎検討を進めることを計画した。FBGは歪みが加わると反射スペクトルが変化するので、歪みセンサとして利用できる。一般に、同じ特性のFBGは反射スペクトルが重なるため、その分離が問題となる。本研究では、この問題を解決するため、研究代表者らがこれまで検討を進めてきた「受光素子の二光子吸収応答(TPA)を利用した多点FBGセンサ」を発展させた光学系を構築した。この多点FBGセンサは、各FBGの反射スペクトルが重なっていても各FBGまでの距離を計測することで、スペクトルの分離ができる。実験ではコア数が7つの標準的なマルチコア光ファイバに反射帯域が0.2 nm以下、反射中心波長がほぼ等しいFBGを光ファイバの長手方向3箇所に加工し、センシングファイバとした。光源、光変調器、受光部を含むシステムの構築と制御系と信号処理手法の検討を進め、提案手法による多点一括曲げ計測の原理確認までを当初の予定通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は、7コアからなるマルチコア光ファイバの隣り合うコアや長さ方向に加工されたFBG反射スペクトルが互いに重なっていても、それらが光スイッチ等を使わずに分離されて測定できる光学系を構築し、その動作確認を行った。当初、光ファイバ長手方向に2か所のマルチコアFBGでの曲げ測定考えていたが、昨年度末にはマルチコアFBG3ヶ所における向きと曲げの大きさを含めたベクトル曲げ測定実験に成功している。このように前年度は曲げ測定の多点化の原理実証に重点を置いたが、本年度は前年度の成果を土台に測定の高速化手法の検討を加えて研究を進める。そのための新手法を実証するために、光学系、制御系の更なる改善を行う。また、高速化による測定精度を始めとする基本的性能への評価、および課題の洗い出しを進める。
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