研究課題/領域番号 |
20H02162
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
尾崎 光紀 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (70422649)
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研究分担者 |
八木谷 聡 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (30251937)
田中 良昌 国立極地研究所, 研究教育系, 特任准教授 (50425766)
小川 泰信 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 准教授 (00362210)
細川 敬祐 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80361830)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電磁波伝搬 / オーロラ / プラズマエネルギー / 機械学習 |
研究実績の概要 |
高エネルギー(数十keV以上)プラズマを特徴づける電磁波伝搬と低エネルギー(約10 keV以下)プラズマを特徴づけるオーロラ現象を組み合わせ、地上リモートセンシングとして降下プラズマ粒子のエネルギー推定範囲拡大を図る本研究目的に対して、以下の成果を得た。 (1)地球周辺宇宙(静止軌道までを対象)における自然電磁波であるコーラス波動の3次元伝搬解析より、ある伝搬角の幅をもったコーラス波動が発生域の磁気赤道から磁力線に沿って高緯度側へ伝搬するほど、地上観測ではより大きな水平広がりを有する脈動オーロラやフラッシュオーロラが形成されることを明らかにした。 (2)時間幅1秒、空間幅60kmに分割したケオグラム画像を学習データに用いて畳み込みニューラルネットワークによる脈動オーロラ、フラッシュオーロラの自動検出器を開発した。交差検証より約75%の精度を確認し、従来 解析者が目視で検出できたイベントに対しては全て検出できる結果を得た。 (3)風などに伴うULF帯電磁波データに含まれる多様な時間幅を有するパルス性雑音を抑圧するために、観測データとして統計的に振幅が極端に大きいもののみを抑圧する信号処理を組込んだ。雑音を模擬したULF帯電磁波データのテストデータに対して、約21dBの向上SNRを得た。振幅の大小より統計的に検出できたULF帯のパルス性雑音データより、今後、振幅に依存しないパルス性雑を検出する学習器開発に取り組む準備が整った。 (4)オーロラ現象の立体視観測システムのための自動観測プログラムを構築し、任意の時間分解能(最速は10Hz)で計測可能となった。 次年度以降のオーロラ現象立体視より、プラズマ粒子エネルギーの推定拡大を実データへの適用に繋げていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然電磁波の3次元伝搬計算、電磁波とプラズマ粒子の共鳴計算、共鳴電子の磁力線トレース計算、大気中への降下電子によるオーロラ発光強度計算を組み合わせ、波動粒子相互作用の連成解析を可能にした。このことより、地上観測で得るオーロラの水平空間サイズより、リモートセンシングとしてコーラス波動の伝搬緯度の様相を推定することが可能であるという新たな知見を得た。また、開発したULF帯電磁波データに含まれる雑音成分抑圧処理を用いて南北両半球の地磁気脈動の非対称性を明らかにし、査読付き国際学術雑誌より公表した。以上より、当初の研究計画に沿って、斜め伝搬を含む自然電磁波の伝搬解析、機械学習を用いたオーロラ現象の検出、電磁波データの雑音抑圧信号処理、立体視観測のための遠隔制御用プログラム実装を進めることができているため。これらの成果を基に、次年度以降は、オーロラ現象の発光高度と比較しながら、プラズマエネルギー推定範囲の拡大を検討できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
電磁波伝搬におけるダクト構造の有無によるオーロラ現象への影響を評価するため、ダクト伝搬の解析を進める。また、自然電磁波の一種であるコーラス波動に共鳴する電子に対する脈動オーロラ、フラッシュオーロラの時空間変化を再現する計算モデルを拡張させ、同じく自然電磁波の一種であるEMIC波動に共鳴する高エネルギープロトン降下に伴うオーロラ現象の計算モデル開発を進める。そして、オーロラ現象の観測値と計算モデル結果を比較し、観測値を再現するプラズマ粒子のエネルギー帯とフラックス量推定に取り組む。引き続き、所望信号と定常・非定常雑音を分類する学習器の改良、オーロラ現象を検出する学習器の改良を進める。特に、Grad-CAMなどの学習器の注目特徴を解析し、各クラスがどのような特徴を注視しているかを明らかにし、学習データや学習器の改良に役立たせる。そして、COVID-19に関する今後の国際情勢より、海外出張が可能になったときに備えて、国内で立体視観測システムのテスト運用を実施し、システム安定度を高める。
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