研究課題/領域番号 |
20H02163
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大多 哲史 静岡大学, 工学部, 助教 (30774749)
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研究分担者 |
倉科 佑太 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40801535)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 磁気緩和 / 磁化率 / 緩和時間 |
研究実績の概要 |
磁性ナノ粒子は磁場に反応するベクトル量(磁化)を有するため、磁場に対して応答を示す。がん診断において、腫瘍に集積させた磁性ナノ粒子を可視化する磁気粒子イメージングと、交流磁場印加による粒子の発熱を利用した低侵襲ながん温熱治療を併用した、診断治療の実用化が期待されている。本研究では、診断治療への応用を期待されている、複数のコア粒子が集合して実効的に単一粒子として機能するマルチコア構造について、その磁化応答を解明することを目的としている。以下に2021年度に実施した研究及び得られた成果を示す。 (1)超常磁性ナノ粒子の磁化の過渡的な応答時間として計測できる緩和時間(特にネール緩和時間)は、ナノ秒オーダーである。このため本研究では、10 ns程度で高速に静状態に遷移するパルス磁場を印加可能な励磁システムを構築した。しかし高速応答に対応した計測システムは、ミリ秒オーダーで生じる低速な応答には対応しないため、低速応答に対応する計測システムを構築し、2つを合わせることで、マルチコア磁性ナノ粒子の緩和時間計測に着手した。 (2)マルチコア構造を含む構造の異なる複数種類の磁性ナノ粒子に関して、交流磁化率と直流磁化曲線のデータからパラメータ解析を実施した。さらに従来のデバイモデルに基づいたネール緩和とブラウン緩和の両方を考慮した磁化率の周波数特性についても理論モデルを導出した。 (3)細胞内における磁性ナノ粒子の磁化応答計測は、磁性ナノ粒子の医療応用において生体内における磁化応答を理解する意味で極めて重要である。生細胞に添加した磁性ナノ粒子の磁化応答計測をするために、培養された接着細胞に取り込まれた微少量の磁性ナノ粒子を計測可能な微小信号計測システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、高速な磁化応答を観測可能なパルス励磁システムにより緩和時間計測に着手し、交流磁化計測に基づいた実測に基づいた磁化応答モデルの構築、さらに生細胞内の磁性ナノ粒子の磁化応答計測を可能な微小信号計測システムの構築を遂行したため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に引き続き、高速応答を実現したパルス励磁システムを用いたマルチコア構造磁性ナノ粒子の緩和時間実測において、特に印加磁場強度に対する依存性の解析に取り組む。また、生細胞環境における磁性ナノ粒子の磁化応答計測を実施し、水中分散状態や樹脂での固定状態の磁性ナノ粒子と磁気特性を比較することで、細胞内における磁性ナノ粒子の状態を詳細に解析する。
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