研究課題/領域番号 |
20H02164
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
末廣 純也 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (70206382)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 誘電泳動 / カーボンナノチューブ / 両極性FET |
研究実績の概要 |
(1) 誘電泳動集積法を用いてFET型CNTガスセンサを作製した。酸化膜厚200 nmの低抵抗n-Si基板上にCrの櫛歯電極を作製し、ソース/ドレイン電極とした。基板上面の一部の酸化膜を除去し、リード線を接続してSi全てがバックゲートとなるようにした。マイクロ流路を用いて半導体単層CNT懸濁液を櫛歯電極上に循環させながらドレイン・ソース間に100 kHz、20 Vp-pの正弦波交流電圧を印加し、120秒間誘電泳動集積を行った。 (2) 作製したCNT-FETガスセンサをチャンバに設置し、N2を供給しながらUVを2時間照射しガスセンサを初期化した。UV照射を止め、N2希釈のNO2 (濃度100 ppb)を供給しソースメジャーユニットにより5分毎にドレイン電圧VDS = -3 V、ゲート電圧VGS = -20 V → 20 V → -20 V で掃引しIDS-VGS特性を測定した。 (3) ゲート電圧によりp型・n型が切り替わる両極性の応答と、電流ヒステリシスが見られた。NO2暴露より、全体がゲート電圧正の方向に推移した。ゲート電圧が正の領域では、負の領域より大きく減少し、p型領域だけでなくn型領域でもNO2曝露による電流値の変化を確認できた。 (4)電流ヒステリシスの現象の一つの要因と考えられる水分子吸着の影響を調査するため、200℃の加熱により水分子脱離を行い、IDS-VGS 特性の測定を行った。その結果、加熱後も電流ヒステリシスが観測され、同現象は水分子の影響ではないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘電泳動集積法を用いたFET型CNTガスセンサを作製しそのNO2に対する応答を調べた結果、目標としていた両極性特性が確認でき、p型領域だけでなくn型領域における電流値の変化を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる令和3年度は、主にCNT-FET特性に及ぼすCNTカイラリティの影響解明を目的とした研究を実施する。CNTはカイラリティによってそのバンド構造が変化するため、同じ半導体CNT-FETであってもカイラリティによってその伝達特性が影響を受けることが予想される。研究代表者はこれまでにもスピンカラムクロマトグラフィ法による半導体CNTのカイラリティ分離と誘電泳動集積法を組み合わせたCNT-FETガスセンサの高感度化に関する研究を実施している(基盤B 23360180)。 本テーマではこれと同様の手法を用いてCNT-FETへのカイラリティの影響を調べ、両極性特性の改善と未解明な点が未だに多い両極性CNT-FETおける伝達機構の解明に取り組む。更に前年度に実施した電極材料の影響に関する研究成果も考慮して、電極材料とCNTのカイラリティの両方を考慮した両極性CNT-FET作製条件の最適化を試みる予定である。
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