研究課題/領域番号 |
20H02169
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金子 修 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00314394)
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研究分担者 |
定本 知徳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (40839966)
増田 士朗 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (60219334)
山本 豪志朗 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70571446)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | データ駆動制御 / データ駆動予測 / 制御仕様 / 制御性能 / 大規模システム |
研究実績の概要 |
多数回の実験を必要とするIFTを,1回の実験で調整する方法を提案した.制御と仕様の関係については,カスケード系についてインナーループの特性を予測してアウターループの制御仕様を適切に更新する方法を提案した.また全状態オブザーバ併合系に対しても制御・モデル・仕様を同時更新する方法をデータ駆動予測を用いて提案した.これらは三項関係を解析する重要な道具であるデータ駆動予測の応用として学術的に重要な意義をもつ. 安定性に関しても対象の構造が不明な場合やむだ時間系の制御器更新法や安定余裕を考慮した方法を提案した.クラスの拡張という点では,多入出力むだ時間系に対するID-IMC,GIMC, 動的量子化器へのデータ駆動制御の適用を提案し,数値例等で良好な成果を得た.その他,制御仕様についても外乱除去や最小分散制御などにおいてIFTをはじめとしたデータ駆動制御の新たな知見を見出し,方法を拡張した.これらは安定性という重要な仕様の保証やクラスの拡大という点から実用上意義を持つ. データを適切に「毒化」することでデータ駆動制御による制御性能を改悪する攻撃法を見出した.これはサイバーセキュリティにおけるデータ駆動制御の研究の新しい成果であり,今後の新展開に向けて意義がある. 大規模系に対する分散制御器の獲得について,階層システムと呼ばれるクラスのネットワーク系を対象として,完全に分散的に学習可能な手法を提案した.本成果は,学習に要する計算量・データ量が対象のサブシステム数に依存しないスケーラブルな手法であるという特徴を持つ. 人間系への応用について,人間の俊敏性を計測する実験システムの構築を進め,ある程度の形を得た.その実験システムを用いていくつかのデータ取得を始めた.同時に具体的なデータ駆動制御の導入や効果を確認するための実験プロトコルを検討した.これは実験検証の整備という点で重要な位置づけにある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ駆動予測の様々な応用を見出すことができ,制御仕様の適切な設定法について前年に引き続き実用上有用な成果を得ることができた.その他,対象や制御器のクラス,制御仕様の拡張を順調に行えた.また,人間の反応の実験系についても実験機を作成し実験に踏み込めたことは進展したといえる.そして,新しい展開でもある制御セキュリティへの応用の一環として,データ毒化の研究で成果を得たことが特筆すべきである.以上のような理由でおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
予測という観点から適切な制御仕様の設定法について,より理論的に洗練した形でその方法論を構築していく.そして,制御・仕様・データの三項関係に基づく制御理論の構築を試みる.さらに,新たに始めたデータ駆動制御と制御セキュリティについて,攻撃のみならず守備の手法についても考察を進めていく. 大規模系については,これまでの研究成果より,制御・データ・仕様の3項関係に基づくデータ駆動制御のためには,データの”量”が重要であることも明らかとなった.しかし,大規模システムへ単純に適用するとデータ量も大規模とならざるを得ない.この観点から,少ない量のデータに基づく学習手法の基礎理論を構築した.本年度では,これらの成果のさらなる一般化を目ざす. 人間の反応系への応用については,内部モデル制御を中心に,制御の問題設定として適切に検討し,実験も踏まえながら,データ駆動制御を用いた人間の特性モデリングとアシストという当初の目的に向けて研究を進める.
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