研究課題/領域番号 |
20H02181
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
垣尾 省司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70242617)
|
研究分担者 |
水野 潤 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 上級研究員(研究院教授) (60386737)
鈴木 雅視 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60763852)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | SAWフィルタ / 異種材料接合 / 高調波 |
研究実績の概要 |
第5世代通信システムの普及,次世代通信システムへの進化のために,端末用の弾性表面波(SAW)フィルタの高周波化が急務であるが,高周波化に必要な電極周期の狭小化は限界である.本研究では,異種材料接合を用いてSAWの高調波を強勢に励振させ,電極周期を狭小化させることなく高周波化を可能な基板構造を開発し,超高周波フィルタに応用することを目的としている.本年度の主な研究成果を以下に示す. 1. 有限要素法を用いて,LT,またはLN薄板を水晶支持基板と接合した構造上の共振特性をシミュレートした.まず,漏洩SAW(LSAW)の三次高調波の共振が強勢に現れる電極厚みと電極メタライゼーション比を明らかにした.次に,LSAWに対して高結合,低伝搬減衰,高安定な特性が同時に得られる規格化板厚を三次高調波に設定したところ, LT,またはLN単体よりも強勢なLSAW三次高調波の共振応答を示し,0.8付近のメタライゼーション比において最大の応答を示すことを明らかにした. 2. 前項の結果を踏まえ,36°YX-LTとAT0°X-水晶が直接接合された後,LTの板厚を1μmに研磨された試料を用意し,Al蒸着膜のウェットエッチングを用いて波長20μmの共振子電極パターンを作製し,共振特性を評価した.メタライゼーション比が大きいほど三次高調波の共振が強勢に現れ,メタライゼーション比が0.8のとき,LT単体と比較して,三次高調波のアドミタンス比は31dBから63dBに,比帯域幅は0.8%から1.4%に,共振Q値は480から1770にそれぞれ増加し,LT単体の基本波と同等の共振特性が三倍の周波数で得られることを実験的に明らかにした.また,LT単体よりも良好な温度特性を示すことを実験的に明らかにした.さらに,ドライエッチングにより作製した電極パターンにより,五次高調波に対して41dBのアドミタンス比が得られた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画していた高調波強勢励振基板構造の設計と,低周波帯における予備実験をほぼ完了し,目的に見合う成果が得られていることから,おおむね順調に進展していると判定される.
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度に理論的,実験的に得られた三次高調波の強勢励振に必要な異種材料接合パラメータ,および電極パラメータの知見を用いて,高周波・高Q・高安定基板構造を確立させる.具体的な実施方法は以下の通りである. 1.高調波共振子の設計・作製・評価: 支持基板として,より高性能化が見込まれるATカット90°X伝搬水晶を採用したLT薄板,およびLN薄板との接合試料を準備し,低周波帯(三次高調波共振周波数は約600MHz)において高調波共振子の設計・作製・評価を行う.その評価結果を踏まえて電極の微細化を図り,高周波帯(三次高調波共振周波数は約3GHz)において実験的評価を行い,高周波・高Q・高安定基板構造を確立させる. 2.超薄板化の検討: 水晶支持基板と薄板の接合強度と研磨後の共振特性の相関を評価することにより,高周波特性の実験的検討に必要な0.2μmの薄板化のための接合・研磨条件を検討する.
|