研究実績の概要 |
5G通信システムの普及,次世代通信システムへの進化のために,端末用の弾性表面波(SAW)フィルタの高周波化が急務であるが,高周波化に必要な電極周期の狭小化は限界である.本研究では,異種材料接合を用いてSAWの高調波を強勢に励振させ,電極周期を狭小化させることなく高周波化が可能な基板構造を開発し,超高周波フィルタに応用することを目的としている.本年度の成果を以下に示す. 1. 36°YX-LiTaO3(LT)とAT90°X-水晶(Qz)が異種材料接合され,LTが0.9 μmの板厚に研磨された4インチ径ウエハ上に,Alスパッタ膜を用いて共振子パターン(すだれ状電極IDTの波長λ=8, 10 μm,メタライゼーション比=0.8)を作製した.λ=10 μmの試料では1.2 GHz,2.0 GHzに三次,五次高調波の応答が観測された.三次高調波のアドミタンス比,比帯域幅,共振Q,反共振Qの各測定値は,61.1 dB,1.3%,1,700,1,720であり,これまでに評価した600 MHzにおける36°YX-LT/AT0°X-Qz上の三次高調波の測定値と同等の特性が得られた. 2. 位相速度が速く,より高周波化に有利な縦型LSAW(LLSAW)の三次高調波共振特性を,X-36°Y-LiNbO3(LN)/X-35°Y-Qzについて有限要素法によりシミュレーション解析した.IDT間のギャップをSAWデバイス製造上限界とされる0.3 μmとし,メタライゼーション比を0.8,λ=3 μmと設定したところ,6.6 GHz,11.0 GHzに三次,五次高調波の応答が観測された.LNの材料Qを1,000と仮定したときの三次高調波のアドミタンス比,比帯域幅,共振Q,反共振Qの各シミュレート値は73.4 dB,2.0 %,2,190,2,240であり,超高周波フィルタへの適用可能性を示した.
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