研究課題/領域番号 |
20H02182
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 剛志 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (50303665)
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研究分担者 |
大島 大輝 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任助教 (60736528)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電子・電気材料 / 磁性材料 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本年度は重希土類であるGdと遷移金属であるFeCoの合金およびそれらの多層膜をマグネトロンスパッタ法により作製し,その磁気特性の評価を行うとともに,5 um-10 um幅の細線状に微細加工し,スピン軌道トルクおよびスピン軌道トルク磁化反転の膜構成依存性,温度依存性を調べた.まず,GdFeCo合金のスピン軌道トルクの温度依存性,膜厚依存性を評価した.GdFeCoのフィールドライクトルク(スピン軌道トルクの1つ)は磁化補償温度を挟んで符号が反転することを確認し,このフィールドライクトルクの符号により磁化反転のしやすさが変化することが分かった.また,GdFeCoのスピン軌道トルクは膜厚の増加に対して減少する傾向が得られたが,単調に膜厚の逆数に比例しないことが分かった.これは,GdFeCo膜は膜厚方向に均一ではなく,空間反転対称性が破れていることを反映していると考えられ,バルクジャロシンスキー守谷(DMI)相互作用が大きくなっている可能性を示唆する結果が得られた.次にGd(x)/FeCo(1-x)多層膜においてxを変化させ,そのスピン軌道トルクの変化を調べた.作製したGd/FeCo多層膜はx = 0.5-0.55 nmで磁化補償となることを確認され,Gd/FeCo多層膜のスピン軌道トルクの等価磁場は磁化補償となる膜構成において増加することが確認された.この傾向はGdFeCo合金と同様であり,膜厚を精密に制御したGd/FeCo多層膜が作製できてることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度,新型感染症の拡大により,本学の警戒カテゴリーが上昇し,学生の入構制限,研究活動の制限などにより,研究進捗が2ヶ月程度遅れた.これにより本年度予定していた膜厚方向に対称性の破れた希土類/遷移金属多層膜の作製まで検討を進めることができなかったが,現在は通常通りの研究活動を行うことができる状態に戻っており,今後十分進捗の遅れをカバーできると考えている.また,感染症拡大のため,磁界中プローバへの磁区観察ユニットの納入も当初予定に比べ遅れたため,磁区観察によるジャロシンスキー守谷相互作用の評価もやや遅れているが,こちらも今後十分進捗遅れをカバーできると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
Gd/FeCo系多層膜の膜厚方向に構造変調を加えることで人工的に空間反転対称性を破った試料を作製し,ジャロシンスキー守谷(DMI)相互作用を計測する.Gd/FeCo系多層膜の膜構造とDMIの相関を明らかにし,空間反転対称性の破れによるDMI増強を確認する.また,空間反転対称性の破れとGd/FeCo多層膜の角運動量補償によるスピン軌道トルクの増強を試みる.具体的には,複数の組成勾配Gd/FeCo系多層膜を積層した 交換結合膜とすることで,角運動量補償,DMI増強を同時に達成し,それによるスピン軌道トルクの増強を調べる.さらに,Gd/FeCo系多層膜またはより微細加工が容易なCo/Pd系多層膜を含む3次元メモリ構造を作製し,スピン軌道トルク磁化反転とスピン移行トルクによる情報伝達という3次元メモリの原理実証を進める.
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