研究課題/領域番号 |
20H02188
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長田 貴弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (10421439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高誘電体材料 / フッ化物 / 界面 / 絶縁膜 / ワイドギャップ |
研究実績の概要 |
本研究は、我々が提案しているフッ化物薄膜の高誘電体ゲート薄膜材料応用で課題となっている界面欠陥制御とヘテロ界面でのフッ素の果たす役割を明らかにし、それらを制御することでフッ化物が持つ、高誘電性、高絶縁性を活用したの素子の高機能化を目的としている。本研究では、これまでの報告例から比較的高い誘電率(30~50)が期待できるLaF3, CeF3の2種類を基本材料としている。しかし、薄膜化した場合、誘電率は20を超えているが期待される40程度の誘電率と漏れ電流の低減が得られていない。本年度では、漏れ電流特性改善を実現するために膜中欠陥及びヘテロ界面での欠陥制御技術確立のために希土類フッ化物材料の価数制御による欠陥制御を実施した。LaF3では材料の固溶体化によって非晶質・電荷中性化による漏れ電流低減を試みた。固溶体化の検討は、対象材料に価数変動と誘電率の観点からHfF4を用いて、ハイスループット合成・評価技術を用いた。これにより系統的にHf組成比を制御した試料で固溶体の中間組成前後でフッ化物層が非晶質であることを確認した。誘電率は、Hf組成の増加と共に単調減少するが、漏れ電流は、La:Hf比が0.5 前後まで減少し増加に反転する傾向を示した。光電子分光からLa:Hf比が0.4からは欠陥が増加傾向へと反転することを確認した。本HfF4LaF構造ではGaNに対して急峻な界面が形成されたことを確認し、高機能化への可能性を見出した。一方のCeF3はGe基板チャネルでの界面安定性向上に取り組んだ界面に価数変動が少なく熱拡散理論のデータ科学に基づきBaF2フッ化物を導入することでGeの界面拡散に対して界面特性改善の可能性を示す結果を得た。これにより、Ge上のフッ化物でのキャパシタ動作に改善がみられ、素子機能向上を確認した。 両成果によって高機能化の可能性が示され、今後素子評価に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記載した研究目的に対して以下の2点に焦点を絞り研究を行っている1) フッ化物/半導体界面の欠陥構造を明らかにし、その制御法を確立する(チャネル材料はGaNを使用)2)フッ化物/Ge界面制御によるEOT<0.5nmの実現 これらに対して今年度はフッ化物の組み合わせによる欠陥・界面制御の可能性を検討した。 1)に対しては固溶体化とイオンの価数変化を組み合わせることで容易に結晶化するLaF3の非晶質化と電荷中性条件の制御によって欠陥構造の低減による漏れ電流の低減を実現した。また、2)の第一の課題は、Ge基板表面は、酸化しやすく価数が変動しやすいため従来の酸化物絶縁膜では界面反応と併せて酸化膜側にGeが拡散する点である。これに対してフッ化物では表面酸化は抑制できたがGeの界面拡散の課題は残っていた。これに対して熱拡散理論をベースとたデータ群から拡散バリアとして機能し、比較的高い誘電率として機能するフッ化物を抽出し、初期バッファー層として形成条件を検討した。結果としてGeの界面拡散の抑制を確認し、キャパシタ構造での素子動作を確認した。 今年度の結果は欠陥制御と界面制御の可能性を示し、素子構造の機能向上を主な目的とする次年度以降の研究に資する結果であり、概ね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に記載した研究項目1)、2)に対して前年度はフッ化物の組み合わせによる欠陥・界面制御の可能性を検討し、1)に対してはイオンの価数変化を組み合わせることで電荷中性条件を制御し、欠陥構造の低減による漏れ電流の低減を実現した。また、2)に対して熱拡散理論をベースとしたデータ群からGeの拡散バリアとして機能し、比較的高い誘電率として機能するフッ化物を抽出し、その初期層の形成条件を検討することで期待された界面の改善が得られた。今後は素子構造でのヘテロ界面でのナノスケールでの構造評価と高度な電気特性評価を実施することで素子動作での課題の抽出と機能向上を試みる。 素子の界面評価として光電子分光(放射光施設での硬X線光電子分光も予定)で非破壊計測を実施し、界面結合状態、バンドアライメント評価を実施する。光電子分光は、深さ方向はnmオーダーであるが面内の測定領域はμmオーダーの平均情報となる。これに対してnmオーダーでの微小領域での欠陥、粒構造に由来する電気特性との相関をプローブ顕微鏡で実施する。マイクロ波顕微鏡での誘電率分布計測と広がり抵抗測定(SSRM)と組み合わせることで誘電率分布と漏れ電流特性との相関性を評価する。分光法とプローブ顕微鏡の結果を併せることで高誘電率絶縁体/半導体界面の欠陥構造と電気的特性劣化との関係性を明らかにできると考える。 素子電気特性評価は欠陥由来の電荷応答性を考慮した測定と高周波での素子評価を実施する。電圧-容量測定の様な素子の基本評価以外に、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)測定とインピーダンス測定を実施する。これにより、分光、プローブ測定実験結果と相互関係が詳細に議論可能となり、素子構造での界面構造の理解と制御を試みることで機能向上を目指す。
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