本研究は、フッ化物誘電体材料の界面制御について以下の2点を目標に実施した。 1) フッ化物/半導体界面の欠陥構造を明らかにし、その制御法を確立する(チャネル材料はGaNを使用) 2) フッ化物/Ge界面制御によるEOT<0.5nmの実現 上記に対して前年度までにフッ化物の組み合わせによる欠陥・界面制御の可能性を検討し、1)に対してはイオンの価数変化を組み合わせることで電荷中性条件を制御し、欠陥構造の低減による漏れ電流の低減を実現し、光電子分光による計測結果からワイドギャップ半導体に対して十分なバンド差を確保できる材料であることを確認した。さらなる界面安定性の向上のために半導体表面のパッシベーションと中間層の形成の2点について検討を行った。表面層のパッシベーションはフッ素化物を含む窒素ガス雰囲気での熱処理を行いGaN表面層のフッ化終端について検討を行った。複数のガス種に対してNF3ガスがGaN表面を強く終端化できることを確認した。研究期間中でのフッ化物高誘電体膜との組合せたキャパシタ構造で電気的特性の向上の確認には至らなかったがPtに対するショットキー特性では改善が確認され欠陥形成の抑制が可能であることを示す結果を得た。Ge基板上においてはGeの拡散バリアとしてフッ化バリウムを中間層として実施した。フッ化バリウム層の膜厚を変更した場合に誘電率は減少するがキャパシタ特性を示す結果を得た。この際のEOT値は、目標値の達成には至らなかった。この原因としてフッ化物の欠陥形成と、大気暴露時の酸化による可能性が光電子分光計測の結果から明らかになった。この点について上部電極を含むキャパシタ素子構造の形成を真空中で実施することで改善の可能性を見出し、継続して研究を進めている。
|