研究実績の概要 |
2020年度は、スピン異常ホール伝導度および異常ホール伝導度のフォノン結合効果に関する計算手法の確立と、代表的な強磁性金属L10-FePt,CoPt,NiPt等に対する計算を行った。 特に、スピン異常ホール効果と異常ホール効果を、運動量演算子の行列要素に対するスピン成分に分解して理論解析を行った。その結果、FePt,CoPt,NiPtのスピン異常ホール伝導度の各スピン状態の寄与は、価電子数の増大とともに系統的に変化することを見出した(論文準備中)。 また、ハーフメタルホイスラー合金の有限温度電子状態計算を行い、スピン偏極率の温度依存性の物質による違いを理論解析した。その結果、sp状態のスピン偏極率の温度依存性は、強磁性転移温度やフェルミ準位と伝導帯とのエネルギー差などに大きく依存し、Co2FeGaGeがCo2MnSiよりsp状態のスピン偏極率の温度依存性が小さいことを明らかにした(論文投稿中)。 また(111)面配向の磁気トンネル接合における磁気抵抗効果の起源を明らかにした。特に、L11-CoX(X=Ni,Pd,Pt)/MgO(111)/L11-CoXのMTJにおいて、多数スピン状態の界面共鳴トンネル効果により、2000%近い磁気抵抗効果が期待できることを見出した。本成果は論文誌(K. Masuda, et al., PRB 103, 064427 (2021).)に掲載された。 更に、スピネルバリアMgGa2O4を用いた磁気抵抗効果の理論解析を行った。Fe/MgAl2O4/Fe(001)の磁気抵抗比は200%~600%とFe/MgO/Fe(001)よりも10分の1程度であるが、面積抵抗が1桁程度小さくなり、低抵抗素子として期待できることを見出した。本成果は論文誌(K. Nawa, et al., PRB 102, 144423 (2020).)に掲載された。
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