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2020 年度 実績報告書

スピン輸送現象の有限温度特性に関する理論研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H02190
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

三浦 良雄  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (10361198)

研究分担者 増田 啓介  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 研究員 (40732178)
只野 央将  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 研究員 (90760653)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードスピントロニクス / 第一原理計算 / スピン異常ホール効果 / 磁気ダンピング効果 / 磁気抵抗効果
研究実績の概要

2020年度は、スピン異常ホール伝導度および異常ホール伝導度のフォノン結合効果に関する計算手法の確立と、代表的な強磁性金属L10-FePt,CoPt,NiPt等に対する計算を行った。
特に、スピン異常ホール効果と異常ホール効果を、運動量演算子の行列要素に対するスピン成分に分解して理論解析を行った。その結果、FePt,CoPt,NiPtのスピン異常ホール伝導度の各スピン状態の寄与は、価電子数の増大とともに系統的に変化することを見出した(論文準備中)。
また、ハーフメタルホイスラー合金の有限温度電子状態計算を行い、スピン偏極率の温度依存性の物質による違いを理論解析した。その結果、sp状態のスピン偏極率の温度依存性は、強磁性転移温度やフェルミ準位と伝導帯とのエネルギー差などに大きく依存し、Co2FeGaGeがCo2MnSiよりsp状態のスピン偏極率の温度依存性が小さいことを明らかにした(論文投稿中)。
また(111)面配向の磁気トンネル接合における磁気抵抗効果の起源を明らかにした。特に、L11-CoX(X=Ni,Pd,Pt)/MgO(111)/L11-CoXのMTJにおいて、多数スピン状態の界面共鳴トンネル効果により、2000%近い磁気抵抗効果が期待できることを見出した。本成果は論文誌(K. Masuda, et al., PRB 103, 064427 (2021).)に掲載された。
更に、スピネルバリアMgGa2O4を用いた磁気抵抗効果の理論解析を行った。Fe/MgAl2O4/Fe(001)の磁気抵抗比は200%~600%とFe/MgO/Fe(001)よりも10分の1程度であるが、面積抵抗が1桁程度小さくなり、低抵抗素子として期待できることを見出した。本成果は論文誌(K. Nawa, et al., PRB 102, 144423 (2020).)に掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度は、バルク電子状態の温度依存性に関する知見がえられた。また、有限温度におけるスピン輸送特性に関する計算手法の整備を行った。特に、TightBinding模型による磁気抵抗効果の解析において、コヒーレントポテンシャル近似によって有限温度におけるスピンの揺らぎを有効的とりいれて有限温度効果を解析する基盤が構築できた。更に、有効ハミルトニアンを用いた磁気抵抗効果の有限温度計算手法の開発を行い、特にその材料依存性を明らかにするため、第一原理計算から有効模型での計算パラメータの導出を行った。また、有限温度におけるフォノン効果を取りいれた磁気物性の第一原理計算に着手し、その効果を確認することができた。

以上のことから、スピン輸送の有限温度効果を明らかにする基盤がととのっており、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

2021年度は、スピン異常ホール効果、異常ネルンスト効果、磁気ダンピング効果、結晶磁気異方性の計算に対して、フォノンの影響を取り入れて、具体的な有限温度効果の解明に取り組む。また、Tight-binding模型による磁気抵抗効果の温度依存性において、重要な物理因子となる新規な交換相互作用を考慮した理論解析を行い、有限温度磁気抵抗効果の物質依存性を明らかにする。さらに、界面でのスピン輸送特性の有限温度効果を解析する足掛かりとして、多層膜系におけるスピン異常ホール効果および異常ネルンスト効果の第一原理計算を行う。また、2022年度は実際のデバイスを想定し、強磁性金属多層膜や絶縁体/強磁性体界面におけるスピン異常ホール効果、磁気ダンピング効果の第一原理計算を行い、有限温度における振る舞いを明らかにする予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Interfacial giant tunnel magnetoresistance and bulk-induced large perpendicular magnetic anisotropy in (111)-oriented junctions with fcc ferromagnetic alloys: A first-principles study2021

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Masuda , Hiroyoshi Itoh, Yoshiaki Sonobe, Hiroaki Sukegawa , Seiji Mitani, and Yoshio Miura
    • 雑誌名

      PHYSICAL REVIEW B

      巻: 103 ページ: 064427/1-10

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.103.064427

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Interfacial resonant tunneling induced by folded bands and providing highly spin-polarized current in spinel-oxide barrier junctions2020

    • 著者名/発表者名
      Kenji Nawa , Keisuke Masuda , and Yoshio Miura
    • 雑誌名

      PHYSICAL REVIEW B

      巻: 102 ページ: 144423/1-9

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.102.144423

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] スピン軌道相互作用を起源とする磁気物性の第一原理計算2021

    • 著者名/発表者名
      三浦良雄
    • 学会等名
      NIMS ナノシミュレーション ワークショップ 2020FY
    • 招待講演
  • [学会発表] スピントロニクス・インターフェース・デザイン2020

    • 著者名/発表者名
      三浦良雄
    • 学会等名
      第38回コンピューテーショナル・マテリアルズ・デザイン(CMD)ワークショップ スピントロニクスコース
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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