研究実績の概要 |
2021年度、L10-XPt合金(X=Fe,Co,Ni)のスピン異常ホール効果の理論計算を行い、Fe,Co,Niと価電子数が増大するとともに、特にNiPtでPtの反結合軌道の影響で、少数スピン状態における負のベリー位相が生じることにより、スピン異常ホール伝導度が増大することを見出した。これらの成果を論文(Phys. Rev. Mat. 5, L101402 (2021))に発表した。 また、トンネル磁気抵抗効果の温度依存性の理論解析を行い、温度依存性を決定する重要な物理因子として、伝導的s電子と局在d電子との間の原子内交換相互作用Jsdが重要であることを見出した。また、第一原理計算と局在ワニエ関数を用いたJsdの計算から、Fe1-xCoxのJsdがxの増大とともに減少し、それに伴ってTMRの温度依存性も小さくなることを理論的に見出した。以上の成果は論文(Phys. Rev. B 104, L180403 (2021))に発表した。 さらに、ワイル半金属としてしられるB20-CoSiのスピンホール効果の理論解析を行い、そのメカニズムを理論的に明らかにした。理論的にはΓ点でのCo(d)-Si(p)結合が大きなスピンベリー位相の起源となることを見出した。以上の結果は、実験グループとの共同研究として行い、論文(Phys. Rev. B 3, 033101 (2021))に発表した。 また、スピネルバリアMgAl2O4を用いたトンネル磁気抵抗素子Fe/MgAl2O4/Fe(001)において、両界面にMgOを1層から3層挿入することにより、1000%を超える高いTMRが得られるだけでなく、TMR比のバイアス電圧依存性が改善されて大きなVhalfが得られることを理論的に見出した。以上の成果は論文(Phys. Rev. Appl. 16, 044037 (2021))に発表した。
|