研究実績の概要 |
2022年度は、磁性薄膜の結晶磁気異方性における軌道と四極子の役割に関するレビューを論文にまとめた(Y. Miura and J. Okabayashi, J. Phys.: Condens. Matter 34, 473001 (2022).)。また、有限温度第一原理計算を用いた機械学習による物質探索を行った結果を論文にまとめた(I. Kurniawan, Y. Miura and K. Hono, Phys. Rev. Mat. 6, L091402 (2022).)。
また、2022年度は、有限温度におけるフォノン励起効果が磁気物性に与える影響について、理論計算を行った。特に、磁気記録媒体として有用なL10-FePtを取り上げ、その磁気ダンピング定数に対する有限温度における格子振動の効果について、Kamberskyトルク相関モデルとモンテカルロサンプリングに基づくフォノン計算を行った。まず、フォノン励起における自己エネルギーの虚部を、磁気ダンピングの温度依存散乱率として用いた解析を行い、磁気ダンピングの温度依存性において弱い非単調な挙動が得られた。これらの理論解析より、格子振動の影響により、高温でダンピングがわずかに増加することがわかった。また、実験結果との比較から、熱アシスト磁気記録用L10-FePtグラニュラー媒体における磁気ダンピング定数の低減には、外因的寄与が重要であることが明らかになった。キュリー温度付近の磁気ダンピングに対する格子振動の影響は、スピン揺らぎの影響と比較して大きなものではなかったが、トルク相関モデルにスピン-フォノン結合を含めると、磁気ダンピングの温度依存性を理解する上でその影響はより重要になると考えられる。
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