研究課題/領域番号 |
20H02191
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山田 貴壽 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (30306500)
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研究分担者 |
小川 修一 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00579203)
岡崎 俊也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 副研究センター長 (90314054)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グラフェン / カリウム修飾 / 移動度 |
研究実績の概要 |
高移動度を有するカリウム修飾・積層グラフェンの物性を解明し、二次元デバイス用基板としての応用を探索することを目的としている。 2020年度は、グラフェン中のカリウム状態を評価するために、グラフェン/金属構造の価電子帯分析の実績を有する光電子分光法のスペクトルの解析手法を改良し、原子層のカリウム修飾グラフェンに特化した評価手法を開発した。 修飾したカリウムがグラフェン中かグラフェン表面に存在するかを調べるために、水酸化カリウム水溶液を用いてカリウム添加多層グラフェンを合成し評価分析した。TOF-SIMSによる深さ方向分析の結果から、カリウムがグラフェン膜中に存在することを明らかとした。グラフェン中にカリウムが分布していることが示唆された。カリウム添加による抵抗率の減少は、カリウム添加によりグラフェン中のキャリアが増加することに起因することを明らかにした。 ウエット転写法によるCVD単層グラフェンの積層技術を開発し、欠陥を形成することなく高品質の積層構造形成を実現した。この技術を利用して形成したグラフェン/カリウム修飾グラフェン/シリコン酸化膜構造の電界効果トランジスタの電気伝導特性を評価したところ、グラフェンの移動度が2倍程度向上することを見出した。キャリア散乱機構を解明するために、電気伝導特性の温度依存性評価を進めている。ロックインサーモグラフィ法により、グラフェンのクラックやシワ等の構造、層数をパラメータとして、グラフェン面内の電流経路を調べた。プローブ顕微鏡による局所的な電流経路の評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光電子分光法により、カリウム添加グラフェンの構造を評価した。TOF-SIMSとラマン分光法による多層グラフェンを用いたカリウムの分布評価から、抵抗率減少要因を解明した。 ウエット転写法によるCVD単層グラフェンの積層技術を開発し、作製したグラフェン電界効果トランジスタの電気電導特性から、グラフェンの移動度が増加することを見出した。積層技術を開発したことで、クラックやシワ等の構造欠陥や層数をパラメータとした電流経路を調べることができた。 初年度はカリウム修飾・積層グラフェンの構造作製技術や物性評価手法開発を達成でき、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
カリウム修飾・積層グラフェンの移動度増加要因を明らかとするために、電気伝導特性の温度依存性の評価からキャリア散乱機構を解明する。ロックインサーモグラフィ法により、グラフェン積層構造における電流経路の面内分布評価に加えて、積層中のどの層が優先的な電流経路であるのかを評価する。プローブ顕微鏡や電子顕微鏡観察とラマン分光測定を組み合わせて、電界効果トランジスタのチャネル内の局所的な領域の電流経路とカリウムの分布の関連を評価する。
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