研究課題/領域番号 |
20H02201
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
水柿 義直 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30280887)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノテクノロジー / 単一電子トランジスタ / 金ナノ粒子 / 強磁性ナノ粒子 / リザバー計算 / 低温実験 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,ナノ粒子の集合体を作製し,これがリザバーとして機能することを実証する。ナノ粒子の集合体の中では,微小トンネル接合のネットワークが形成され,単一電子トランジスタ(SET)がランダムに接続されている状態にある。我々の過去の研究により,SETのゲートにリークがあると間欠発振現象が生じること,誘電泳動で作製した金ナノ粒子の集合体がSETとして機能すること,さらに,強磁性体でSETを作製すると特性が磁場によって変調されることが分かっている。これらを利用して,これまでにないナノ粒子集合体のリザバーを超小型固体集積回路として実現し,リザバーコンピューティング動作を実証する。 2020年度においては,主として次の2項目について実施した。 一つ目として,酸化膜付きSi基板上に,直径200 nmの円周上に6本の金端子の先端が配置される構造を実現した。ただし,現時点では歩留まりが低く,作製条件の最適化が必要である。続いて,これら6本の金端子の間に誘電泳動法で金ナノ粒子を集積することを試みた。6端子と接続されたナノ粒子集合体が実現できれば,それがリザバーとして機能するか否かを測定する予定であったが,ナノ粒子集合体の形成には至らなかった。我々には,2端子間のナノ粒子集合体形成に関するノウハウがあったが,6端子での工程の確立には至らなかった。 二つ目として,強磁性体のナノ粒子として炭素被覆Coナノ粒子(以下C-Coナノ粒子)を用い,オンチップ電磁石で電極ギャップにC-Coナノ粒子を集積した。オンチップ電磁石形状の設計には電磁界シミュレーションを用い,またオンチップ電磁石作動中の電極間電流をモニターすることで,2本の電極間にC-Coナノ粒子集合体が形成され,低温での測定にて,単一電子帯電効果(クーロン閉塞とクーロン振動)および磁気抵抗効果を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度においては,オンチップ電磁石を用いた強磁性C-Coナノ粒子集合体の形成に成功しており,ある程度の進捗を果たすことができてはいる。しかしながら,多端子電極の間への金ナノ粒子集合体の形成については実現できなかった。また,その結果,ナノ粒子ランダム配列のリザバーとしての特性評価に着手できなかった。 進行が遅れている主たる理由は,コロナ禍による活動制限にある。我々の研究室は,建物の改修工事のため,2019年10月から2020年3月にかけて移転を余儀なくされた。2020年3月に元の場所が戻り,研究室が使用できるようになったが,それとほぼ時を同じくして,コロナ禍による活動制限が始まり,荷物の梱包を解く間もなく,大学閉鎖に至った。2020年6月から,所属長の許可のもと,大学への最小限の入構ができるようになったものの,実験室の再立ち上げに数ヶ月かかった。2020年10月から,大学への入構に所属長の許可は不要となったが,三密を避けるため,研究室活動は従来の6割程度に制限せざるを得なかった。 また,6本の微小電極作製や,それらへの金ナノ粒子集積が,想定より困難であったことも進捗の遅れにつながった。使用する装置の性能不足や,実験ノウハウの欠如が原因である。実験ノウハウの蓄積には経験値を増やす必要があるが,活動制限が足かせになってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においても,コロナ禍による活動制限は避けられないと考えている。昨年度に導入した各種オンライン技術を効率的に利用し,研究打ち合わせや装置利用その他のより一層の効率化を図る。 その中で,まず多端子電極の間への金ナノ粒子集合体の形成を目指す。具体的には,約100 nm幅の金電極を200 nm程度の間隔で4-8本程度を基板上に形成した後,その中心部分に誘電泳動を利用して数十 nm径の金ナノ粒子のランダム配列を作製する。昨年度にて電子ビームリソグラフィによる電極形成までは成功しており,ランダム配列作製条件(誘電泳動に使用する電圧振幅,周波数,印加時間等)を探る。さらに,磁場を用いた強磁性ナノ粒子配列形成を試みる。作製した試料については,室温において,全ての端子の組み合わせでの抵抗値を測定する。また,SEMによるナノ粒子の集合状態評価を行う。 室温抵抗評価で「電極端子間にトンネル接合列が形成された」と判定された試料について,昨年度に着手できなかった「ナノ粒子ランダム配列のリザバーとしての特性評価」を実施する。準静的特性の測定には半導体パラメータアナライザを用い,動的特性の測定にはディジタル・オシロスコープを加えて,これらをPCで制御し,測定を実施する。(必要に応じて,外部電源や電流‐電圧変換アンプも組み込む。)単一電子帯電効果が発現すれば,電極端子間の電流-電圧特性は非線形となり,かつ,他端子に印加する電圧によって,そのクーロン閉塞が変調される。測定結果を吟味し,非線形性が大きな端子や,他端子間の特性への影響が大きな端子などを選別した後,入力端子群,出力端子群,制御端子群に分け,入出力特性を測定・評価する。さらに,入力信号を時間的に変化させ,応答の様子を測定し,入出力特性の軌道を射影して,リヤプノフ指数を評価する。これらの測定によって,リザバーとしての特性を総合的に評価する。
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