研究課題/領域番号 |
20H02209
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
黄 晋二 青山学院大学, 理工学部, 教授 (50323663)
|
研究分担者 |
須賀 良介 青山学院大学, 理工学部, 助教 (20398572)
渡辺 剛志 青山学院大学, 理工学部, 助教 (30803506)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | グラフェン / 透明アンテナ / CVD |
研究実績の概要 |
2021年度には、グラフェンの低抵抗化を目指し、積層転写したグラフェンへのインターカレーションに取り組んだ。金属塩化物をインターカラントとして積層転写したグラフェンへのインターカレーションを行ったところ、ラマンスペクトル中のGピーク(~1600 cm-1)のブルーシフトが観測された。グラフェンへのキャリアドーピングでは、Gピークのブルーシフトが生じることが報告されており、インターカレーションによるキャリアドーピングに成功したことを示す結果である。しかしながら、インターカレーションプロセスによる金属電極の劣化やグラフェン自体の劣化が生じたため、インターカレーション後のグラフェンのシート抵抗を正確に評価するには至らなかった。 2021年度には、Ir(111)上グラフェンの単結晶性について、分子科学研究所の放射光施設UVSORに設置されている光電子運動量顕微( PMM: photoelectron momentum microscope)を用いて評価を進めた。Ir(111)上にCVD成長したグラフェンにおいて明瞭な6回対称のパターンが観測され、グラフェンが数100平方マイクロメートルの範囲で高い単結晶性を有することが確認された。また、価電子帯分散スペクトルの測定より、グラフェンからIr(111)への電荷移動が発生していることが明らかになり、この電荷移動量がCVD成長条件によって変化することが分かった。グラフェンからIr(111)への電荷移動量はグラフェンのドメイン方向に依存することが報告されており、総合的な評価の結果、グラフェンのCVD成長条件に応じて、グラフェンの結晶方位やIr(111)との電子的相互作用が変化することが分かった。本研究項目を通して、PMMがGraphene/Ir(111)の包括的かつ定量的な評価に適していることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インターカレーションによる低抵抗化プロセスが予想以上の困難さを有するものであったため、TFSA分子を用いたドーピング以上の低抵抗化を達成することができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きインターカレーションの実験に取り組み、インターカレーションによるグラフェンの抵抗化についての総合的な理解、及び透明アンテナへの応用に必要なプロセスの構築を進めて行く。並行して、分子研UVSORのPMMを用いたIr(111)上にCVD成長した単結晶グラフェンの評価についても取り組む予定である。
|