研究課題/領域番号 |
20H02211
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
藤代 博記 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 教授 (60339132)
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研究分担者 |
遠藤 聡 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 客員教授 (60417110)
渡邊 一世 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター, 室長 (20450687)
町田 龍人 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター, 研究員 (50806560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | テラヘルツ領域 / 極限性能トランジスタ / ナローギャップ半導体 / InGaSb / HEMT / 歪みバンドエンジニアリング / 遅延時間解析 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ領域で動作する極限性能トランジスタの開発は様々なテラヘルツ応用技術への道を拓く喫緊の課題である。本研究は、現実的なラフネス散乱と寄生インピーダンスの下で最も遮断周波数fTが高く、雑音指数が低くなるチャネル構造は何かという「問い」に対し、InGaSbチャネルの導入と歪みバンドエンジニアリングにより、電子有効質量の観点からチャネル構造を最適化設計し、デバイスを試作して特性を実証する。従来の性能を凌駕するテラヘルツ領域極限性能トランジスタの開発を目的とするが、Sb系半導体に限らず全てのナローギャップ半導体においてエネルギーバンド構造が高速性、低雑音性、低電圧性等に及ぼす影響を包括的に解明することがその根本にある更なる「問い」であり、これによりワイドギャップ半導体とは異なるナローギャップ半導体の新たな学術分野を開拓する。 これまでに、量子補正モンテカルロ(QC-MC)シミュレータとSPICEシミュレータを統合した寄生インピーダンスを厳密に考慮できるデバイス・回路統合シミュレータを開発した。また基板との不整合に起因する格子欠陥を低減し2次元電子移動度μeを向上させるためのバッファ層の構造及び成長条件の検討を行った。さらに2次元電子濃度Neを増加させるためのダブルドープ構造、μeを増加させるためのInSb/InGaSbコンポジットチャネルを検討すると共に、寄生抵抗を低減するための低選択比エッチャントの開発を行なった。サイドリセスによる寄生抵抗の増加を抑制しつつゲート・チャネル間距離をスケーリングするためにバリア層を薄層化したInGaSb HEMTを試作し、遅延時間解析を行った。その結果、真性遅延時間は低下したが、Neの減少により寄生抵抗が増加し寄生遅延時間は増加した。したがって、ダブルドープ構造等によりNeを増加させれば、全遅延時間が減少しfTが向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は新型コロナ感染症の拡大の影響によるエピ成長およびデバイスプロセスの遅延、令和3年度はMBE結晶成長装置のシュラウドリークによるエピ成長の遅延があったが、令和2年度にチャネルスケーリングした歪みステップバッファ構造InGaSb HEMTの試作を行い、fT=301 GHzの特性を得た。令和3年度はさらにfTを向上させるための要素研究に注力し、SPICEシミュレータとQC-MCシミュレータを統合したデバイス・回路統合シミュレータの開発、貫通転位や積層欠陥を低減し2次元電子移動度μeを向上させるためのバッファ層の構造及び成長条件の検討、さらにサイドリセスに起因する寄生インピーダンスを低減するための低選択比エッチャントの開発を行った。令和4年度は、Neを増加させるためのダブルドープ構造、μeを増加させるためのInSb/GaInSbコンポジットチャネルを検討し、特性を評価した。またサイドリセスに起因する寄生抵抗の増加を抑制しながらゲート・チャネル間距離をスケーリングするために、あらかじめバリア層を薄層化したInGaSb HEMTの試作を行い、遅延時間解析を行った。その結果、ゲート・チャネル間距離のスケーリングにより真性遅延時間は低下したが、Neの減少により寄生抵抗が増加し寄生遅延時間は増加した。したがってダブルドープ構造等によりNeを増加させれば、全遅延時間が減少しfTが向上することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和5年度は、本研究課題の目標の達成に向け、以下の項目について集中的に研究を進める。 (1)QC-MC・SPICE統合シミュレータによるInGaSb HEMTの構造設計・特性解析:サイドリセスがDC・RF特性に与える影響をバリア層厚やダブルドープ構造によるNeの増加の観点から解析し、その結果をエピ成長およびデバイスプロセスにフィードバックする。 (2)InGaSb HEMTのエピ成長・評価:バリア層を薄層化しかつダブルドープ構造によりNeを増加させたエピウエハを成長し、プロセスに供給する。シミュレーションによる構造設計・特性解析の結果を反映させながら、μeとNeを同時に高めるためのダブルドープ構造InSb/InGaSbコンポジットチャネルのエピ成長を検討する。 (3)InGaSb HEMTのデバイス作製・評価: ゲート・チャネル間距離のスケーリングによる真性遅延時間の短縮と寄生抵抗の低減による寄生遅延時間の短縮を同時に実現することを目的として、バリア層を薄層化しかつダブルドープ構造としたエピウエハを用いて、InGaSb HEMTの試作を行う。評価結果をフィードバックすることによりデバイス構造設計、エピ成長技術およびデバイスプロセス技術の高度化を図り、高fT・低雑音なテラヘルツ領域極限性能トランジスタの実現を目指す。
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