研究課題/領域番号 |
20H02215
|
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
牧瀬 圭正 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (60363321)
|
研究分担者 |
篠崎 文重 九州大学, 理学研究院, 名誉教授 (80117126)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 量子細線 / 超伝導超薄膜 / ジョセフソン接合 / 自己双対 |
研究実績の概要 |
本研究では超伝導量子細線で生じる量子位相すべりを動作原理とした超伝導量子素子を実現する。今年度は窒化物を使った新規なアモルファス膜による量子細線素子を開発するために反応性スパッタ法や原子層堆積法ALD法を使って量子細線の作製に必要な超伝導超薄膜の開発を行った。アモルファス超伝導薄膜は膜厚や乱れをパラメータとして量子相転移を起こすことが指摘されている。乱れは材料の組成比等で変化するので我々は窒素濃度をパラメータとして乱れを調整している。さらにアモルファス膜は結晶性膜と異なり、結晶粒界が存在しないので微細加工で問題となる粒界の影響や加工時の欠陥の影響が小さい。結果として最適化をおこなって成膜したアモルファス窒化物薄膜は超伝導転移を示した。またXRDの結果からも低角側にブロードなピークがみられたのみであり、結晶性示すピークの存在は確認できなかった。またAFMの結果からも表面の平坦性も良好であることが確認できた。次にその薄膜の膜厚誘起および窒素濃度変化で超伝導ー絶縁体転移を示し、その臨界面抵抗の値は量子位相すべりを誘起する理論値に近い値が得られている。並行して窒化物を使ったジョセフソン接合の開発に関しては、NbTiターゲットを用いてRFスパッタ装置による成膜で転移温度12K以上のものが得られた。これまでの経験で14-15Kが得られるはずであるため、成膜条件の最適化を行っている。今後は超伝導コヒーレンス長以下の膜厚で量子面抵抗近傍で超伝導転移を起こす薄膜の成膜条件の探索も行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで実績のある窒化ニオブや窒化チタンニオブによる超伝導薄膜の作製と量子細線加工を行ってきたが、面抵抗値が低いため位相すべりを誘起するため微細構造の作製等がかなり困難であった。そこでアモルファスかつ合金系のMoReやMoRuを使い、これらの膜を窒化することによって酸化に強く、加えて高い面抵抗を有する薄膜を作製し、その超伝導性を確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度作製した薄膜を微細加工で量子細線を作製し、位相すべりを確認する。そのために必要な物性評価やプロセス開発を行う。まず薄膜による2次元超伝導ー絶縁体転移を確認し、その臨界点となる臨界面抵抗の値を確認する。その再現性についても検証を行う。 次にその薄膜を微細加工するための電子線レジストの決定や露光条件の最適化、エッチング条件の探索を行う。並行して作製した素子の評価を行うための測定装置の整備と立ち上げを行う。
|