研究課題/領域番号 |
20H02218
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
呉 智深 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00223438)
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研究分担者 |
原田 隆郎 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00241745)
車谷 麻緒 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (20552392)
岩下 健太郎 名城大学, 理工学部, 准教授 (30544738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 洗堀検知 / 腐食検知 / カーボンファイバセンサ / ワイヤレスセンシング |
研究実績の概要 |
水中構造物の鉄筋腐食や洗掘は、構造物の耐荷力および耐久性を評価する要因の一つである。また、腐食や洗掘は時間の経過とともに蓄積される損傷であり、損傷程度の進行は構造物の耐力が急激に低下する要因である。特に、それらの損傷が複合作用した場合、構造全体の安全性に著しい影響を及ぼす可能性が高いことからも明らかなように、各損傷の早期段階の検知技術の高度化が必要であり、構造ヘルスモニタリング (SHM)への期待は大きい。しかし、これまでの主流なセンサであるひずみゲージや変位計、加速度計などの点センサでは、水中構造物の内部に生じる局所的な腐食損傷を高精度に検知できず、早期の段階で基礎地盤の洗掘を評価することも困難であることが多くの研究により明らかになっている。 本研究では、高耐久性ロングゲージカーボンファイバセンサおよび水中ワイヤレスセンシング技術を使用し、水中構造物におけるカーボンファイバセンサネットワークの開発によって、腐食および洗堀の早期検知システムの構築を行う。カーボンファイバセンサネットワークでは、①の1.一定の空間領域内での微小ひずみ応答を測定できるロングゲージカーボンファイバセンサ、①の2.水中と陸上での同時計測を可能にする分布型ワイヤレスセンシング技術を開発する。腐食および洗堀の早期検知システムでは、構造解析による腐食や洗掘などの損傷と構造物の振動特性の関連性を確立した上、②の1.水中構造物の水中部分と水上部分のひずみ分布による各段階の腐食の同定手法、②の2.動的ひずみ応答を用いたひずみモーダル解析手法による洗掘の同定手法の提案を行う。また、③の1.各損傷量の同定による更新した構造物のパラメータとひずみ測定による構造物の疲労程度評価の連成で総合的な水中構造物の評価システムを構築し、③の2.実構造物への実装によるシステムを実証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目は、早期損傷検知の精度や構造性能の評価を実用レベルに高めることを目的として、今まで考案してきたカーボンファイバセンサの性能と水中への適性を高める。当初計画を踏まえ、カーボンファイバのひずみ計測の直線性の代表長を配慮したロングゲージ化手法や高応力緊張を用いた精度・測定範囲向上手法、すべり止めとなる固定部の構造的な工夫により、線状・平面状・立体状の様々な形状の自己感知材料を製作した。 また、当初計画の2年目の洗掘検知手法の開発について、既存手法や関連文献を幅広く収集した。川床の洗掘において、河道掘削および増水により構造物の基礎条件が変わることに伴い、橋脚の振動モードが変わることが知られている。そこで、動的ひずみ応答による洗掘量の同定手法について、橋脚を模擬した供試体を作成し、洗掘量を与えたうえで衝撃試験を実施した。その結果を基に固有振動数、ひずみモードなどの振動特性に及ぼす影響を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、まず、水中用カーボンファイバセンサにより取得した静・動的ひずみの分布応答による構造物の内部応力、たわみ、回転変形、荷重、固有周波数および振動モード形などの物理量の同定手法を構築する。そして、構造解析による各物理量と腐食損傷の関係を検討した上、腐食量の同定手法を構築する。そこで、本研究では、従来検査困難である早期の洗掘を検知するため、動的ひずみ応答によるモーダルアナリシス手法を構築し、局所的な損傷に敏感なひずみ振動モードによる洗掘量の同定手法を構築する。更に、各損傷量の同定による構造物の物理モデルのパラメータを更新し、ひずみ応答から捉えた交通・風・波・地震の頻度などの構造物の載荷情報を併用して疲労程度を評価する。
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