研究課題/領域番号 |
20H02221
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鎌田 敏郎 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10224651)
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研究分担者 |
寺澤 広基 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50750246)
内田 慎哉 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70543461)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンクリート中鋼材 / 鋼材腐食 / 腐食性生物 / 電磁場応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、かぶりコンクリートの影響を受けず、鋼材の腐食状況をコンクリート表面近傍で評価可能な非破壊評価手法の確立を目指す。具体的には、①腐食に伴う鋼材表面のミクロな磁性変化を、コンクリート表面近傍における空気中での電磁場応答として捉え、定量化する。②次に、コンクリート表面近傍における電磁場応答を、静磁場、動磁場により能動的に制御し、コンクリート表面近傍において鋼材表面の腐食状況を適確に評価可能とする。③さらに、コンクリート表面近傍における空気中での電磁場応答を基に鋼材表面の腐食状況を「逆問題解析」に基づきイメージングすることを目的としている。 これに対しR2年度は、腐食に伴う鋼材表面のミクロな磁性変化を、コンクリート表面近傍における空気中での電磁場応答として捉え、定量化した。具体的には、腐食生成物の表面形状および断面形状と、鋼材表面近傍における磁気分布との関係の把握を目的とし、腐食生成物の作製、観察、磁気特性の評価を行った。その結果、鋼材の腐食の進行に伴い、鋼材表面近傍における磁気分布の変化が大きくなることを確認した。また、本実験条件下では,MIセンサによる電磁場応答の結果から鋼材表面の磁気変化を検出できる深さ方向の距離はおよそ10mm程度であることを確認した。次に、コンクリート表面近傍で腐食を模擬した鋼材を用いて、動磁場の能動的制御により電磁場応答を励振し、サーチコイルを用いた位相検波により腐食個所を検出する条件を明らかにした。また、微小な腐食部位をGMRセンサを用いて検出可能な条件を明らかにした。さらに、コンクリート表面近傍における電磁場応答を基に鋼材表面の腐食状況をイメージングする複数の「逆問題解析」手法を評価し、その可能性を明らかにするとともに、コンクリート表面近傍における電磁場分布を可視化するための8×8chアレイセンサ、微小信号増幅アンプを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が目的としている①腐食に伴う鋼材表面のミクロな磁性変化を、コンクリート表面近傍における空気中での電磁場応答として捉え、定量化する。②コンクリート表面近傍で検出した定量化データを、静磁場、動磁場により能動的に制御し、コンクリート中でのミクロな磁気現象に変換することで、コンクリート表面近傍において鋼材表面の腐食状況を適確に評価可能なマロセンシング手法として確立する。③コンクリート表面近傍における空気中での電磁場応答を基に鋼材表面の腐食状況を「逆問題解析」に基づきイメージングする。のうち、いずれのテーマにおいても、計画に基づいた進捗を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度において構築した「鋼材表面近傍における腐食の電磁場応答モデル」に基づき、外部より印加する動磁場、静磁場により腐食部の電磁場応答を能動的に制御し、かぶりコンクリート表面近傍における電磁場応答のマクロセンシングが最適化される条件を明らかにする。このため、鋼材表面近傍の腐食状況を近似する磁気双極子モーメント、あるいはこれと等価な微小ループ電流を要素とする腐食モデル要素群が、空間を介してコンクリート表面近傍に電磁場応答を伝達する過程を、Maxwell方程式の電磁場理論解析モデルを用いて定式化する。理論的には、磁気双極子モーメント、あるいはこれと等価な微小ループ電流の鋼材表面における分布状況が、かぶりコンクリート表面近傍に形成する合成磁場を個々のベクトルポテンシャル要素が遠方に生成する磁場の合成により算出する。一方、電磁場理論解析ツールとしては、磁性体におけるMaxwell方程式に基づく解析ツール(Matlab他)、電磁場有限要素法解析(PHOTO-eddy、PHOTO-jω他)を用いて定量的に評価する。また、電磁場応答の妥当性を評価するため、空気中で腐食状況を模擬した試験体を作製し、比較的広範囲の電磁場空間でマクロな電磁場応答を精度よく計測できる高感度磁気センサ(GMRセンサ、MIセンサ、MRセンサ、サーチコイル)などを用いて計測し、腐食パターンと電磁場理論解析モデルにより算出されるかぶりコンクリート表面近傍の電磁場応答の関係を実験的に評価する。
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